信用保証協会の債権放棄-時効により、実質的に債権放棄となるケースがある

下記ページで、信用保証協会の債権放棄について解説させて頂きましたが、信用保証協会の債権放棄のガイドラインが厳しいため、「うちでは無理だ…。」と思われた方が殆どだったのではないでしょうか。

信用保証協会の債権放棄-信用保証協会が債権放棄に応じる事はある?

2013.05.31

そこで今回は、信用保証協会の債権放棄に関するガイドラインである「求償権の放棄に係る基準について(全国統一基準)」以外の債権放棄について解説していきます。

 

ガイドラインはハードルが高い

信用保証協会の債権放棄に関するガイドラインを読んで頂ければ分かると思いますが、信用保証協会のガイドラインに沿った内容で債権放棄を受けるのは、かなりハードルが高いです。特に、「経営陣の退陣」等と言われても、中小企業は家族経営やワンマン経営が多いですから、ちょっとピンとこない部分があったと思います。

こうした事を考えると、ガイドラインに沿って債権放棄を受ける事ができる事業者は限られてきます。

この方法以外、債権放棄の道は無いのでしょうか?

いえ、実はあります。信用保証協会のガイドラインに沿った内容でなくても、債権放棄をしてもらう事は可能なのです。

ご存じだと思いますが、借入金や売掛金等の債権には、消滅時効があります。例にもれず代位弁済された債権にも、当然、消滅時効があります。代位弁済された債権も時効が成立すれば債権は消滅します(時効援用による権利行使が必要)。

 

代位弁済された債権の時効

一般的に、商取引によって生じた債権(商事債権)の消滅時効は原則5年となっています。信用保証協会の求償権も、例に漏れず、消滅時効の5年が適用されますので、5年間、保証協会から時効の中断が全く無いまま、5年の時が過ぎてしまったら債権は消滅します。

例え、どんな金額であっても、時効を迎えたら負債は無くなってしまうのです(時効援用による権利行使が必要)。

「なんだ、そうなのか、保証協会の債権は時効で消えるのか…。」そう思ったあなた、ちょっと待って下さい。

確かに、法的にはそのようになっていますが、だからといって、保証協会が簡単に諦める訳ではありません。時効を迎えそうな時期が近づいてきたら、訴訟を起こしてくる場合が多いからです。

保証協会が全く何もしてこないまま時効を向かえた場合、あなたが時効の援用をしてしまえば、時効は成立し、債務は無くなります。でも、債権者である信用保証協会に裁判を起こされてしまったら、時効が10年延長されてしまうのです。

10年、長いですよね。

せっかく時効を迎えても、さらに10年も延長されてしまうのですから、ここで、精神的に参ってしまう方もいらっしゃると思います。裁判を起こされてしまったら、10年待たなければ負債は消えないのでしょうか?

実は、ケースバイケースなのです。

「時効を迎えそうになったら必ず訴訟を起こされてしまい、時効が10年延びてしまうのですか?」と、疑問に思ったでしょうが、この質問に対する答えは、「一概にそうとは限らない」です。

基本的に、訴訟を起こしてくる場合が多いのですが、必ず訴訟を起こすとも限らないのです。

どのような理由かは分かりませんが、なぜか、何もしてこない場合があるのです。ですから、こればかりは、実際に時効間際の対応を見てみないと分からないのです。

 

全額ではありませんが、債権放棄してくれる場合もある

知人のケースを一つ紹介しておきます。

Aさんは、数年前に1億3円代位弁済されたのですが、商事債権の時効が近づいてきた時期に、保証協会から訴訟を起こされてしまいました。訴訟をおこされてしまったら、時効が10年延びてしまいます(争っても意味がないから、結局負けてしまうため)。

「もしかしたら、時効を迎えるのかな?」等といった甘い期待もありましたが、結局は訴訟を起こされてしまいました。裁判所からの訴状が届いたので、早速開封し、書類をよく読んでみると、訴訟の金額が2,000万円になっていました。

「あれ?1億3千万円の借金があるのになんでだ?」実は、一部の債権だけを対象に裁判をかけてきたのです。残りの1億1千万は時効が成立し、負債が消滅してしまいました。2,000万円の負債は相変わらず残っていますが、なんと、残りの1億1千万円は債権放棄してくれたのです。このような方法で、一部、債権放棄に応じるケースがあります。

また、上記のように8割近いカットではなく、債権の半分をカットしてくれたという方もいます。前述の例と同様、債権の半分だけを対象に訴訟を起こしてきて、残りの半分は時効を迎え、負債が消えてしまったのです。

これらのケースを見てもらえたら分かると思いますが、債権放棄のガイドラインに沿ったものではなくても、このような形で債権放棄に応じる事があるのです。前回お話した債権放棄のハードルはかなり高いですが、長期でも借金が消えるなら一向に構わないという事であれば、このような解決策もあるのです。

代位弁済したら、今後一生保証を受ける事ができなくなる?

「信用保証協会に代位弁済された負債が時効で消えるのは分かりました。でも、代位弁済されたら保証協会の保証付き融資は全く受けれないですよね?その場合、一生、新規の保証は付かないのですか?」

一生、新規の保証が付かないという事はありません。これまた要件が厳しいですが、代位弁済された負債を保証する制度があるのです。

代位弁済されたら、求償権が無くならない限り、(保証協会に全て返済しない限り)新規の保証は原則的に出ないのですが、代位弁済された債務を消滅させるための保証制度が保証協会にはあるのです。

この保証制度のお話については、下記をご覧ください。

信用保証協会-求償権消滅保証(代位弁済された求償債務を消滅させる保証制度)

2013.05.31

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ABOUTこの記事をかいた人

1977年神奈川県生まれ。コンサルティング会社勤務を経て独立。店舗ビジネスに特化したコンサルティング業務を展開していたが、身近な人の倒産を目の当たりにした事をきっかけに事業再生に目覚め、平成21年5月より、事業再生に参入。全国各地の中小企業の再生業務に関与し、中小企業の事業再生のサポートを行っている。
平成23年8月、M&Aに特化した株式会社クレアークを設立、代表取締役に就任。現在に至る。業務の幅を広げる事により、サポートの幅を広げている