いまでもたまに見かける「自力救済」。取引先が大手企業であっても末端の社員は知らないことが多い件

つい先日、ご相談者様の会社で面談していた時のことです。取引先の担当者の方がアポなしで来られ、いきなりこのような展開になりました。

取引先T氏
社長、支払いができないならウチが卸した商品を引き揚げさせてもらいますよ。
社長
Tさん、いきなり困りますよ。支払いは確かに遅れていますが、8月〇日に必ずお支払できます。これ以上ご迷惑をおかけしませんから、何卒、今回ばかりはご容赦下さい。
取引先T氏
私も不本意ですが、上から言われたら仕方ないので、今回は引き揚げさせてもらいます。
社長
Tさん、本当に待ってくださいよ!

 

取引先の方は、社長の言葉に耳を貸そうとせず、用件を伝えたらすぐに出ていきました。

なんだか久しぶりに、珍しい場面に出くわしたな~
なんて、一時考えたりしちゃいましたが、社長は本当に困っている様子が伺えたので、このまま帰るのも忍びないと思い、ちょっと助け舟を出す事にしました。

社長、ちょっといいですか?あの取引先との契約書とかありますか?もしあったら見せて頂きたいのですが・・。
社長
契約書・・ですか?探せばあると思います。ちょっと総務に探させます。
あのTさんという方が荷積みを終えてしまう前に、探し出して下さい。
社長
大急ぎで探させます!

それから数分後。総務の方が売買契約書を見つけてくれ、社長の元まで持ってきてくれたので、早速、契約書に目を通しました。

社長、大丈夫ですよ。仕入れた商品は持って行かせませんから安心して下さい。ただ、それより、Tさんの上司に連絡した方が早いですね。彼はあくまでイチ担当者に過ぎませんから、責任者と話をした方が早いです。社長、今すぐ取引先に電話して下さい。
社長
電話するのは構いませんが、どのように話をすれば良いのですか?Tさんも上から言われたと言ってましたから、私なんかが電話したところで、事態は変わるものなのでしょうか。。
社長、いいですか、良く聞いて下さい。Tさんがやっている事は自力救済といって、違法行為なんです。いくら支払いが履行されていないからと言って、卸した商品を勝手に持っていって、回収してしまうのは違法行為です。

ご心配でしたら、今すぐ顧問弁護士の先生に電話して聞いて下さい。同じ事言われますから。

確かに、社長はあの商品の支払いはしていないかもしれません。でも、契約書には支払いができない時は商品を回収するとかどこにも書いていません。契約書に書いていないのに、勝手に商品を回収するのは違法行為なんです。回収には裁判所の許可が必要なんです。

言い難いとは思いますが、今すぐ言わないと、あの商品を持って行かれますよ。持って行かれても今月乗り切れるなら構いませんが、そんな悠長なこと言ってられませんよね?話難いのは痛いほど理解できますが、とにかく、勇気を出して電話して下さい。今すぐ!

 

社長はこの緊急事態に困惑していましたが、このままだと本当に倒産してしまう危険性があった為、早く早くと急かし、とにかく電話してもらいました。

 

取引先が上場企業であっても、法務部以外の人は無知なケースが少なくない。

社長に、Tさんの上司へ連絡してもらい、自力救済はしてはいけないんじゃないですか?と、やんわり伝え、それと併せて、法務部へ確認を取って欲しい旨伝え、いったん電話を切りました。

 

それから5分ぐらい経った頃でしょうか。
社長の携帯にTさんの上司から着信があり、

T氏上司
社長、申し訳ございません。社長がおっしゃるように、商品の引き上げは問題あるみたいです。支払いは8月まで待ちますから、 社長も大変だと思いますが、次からは気を付けてくださいね。Tには、運搬作業を止めるよう、私から連絡しておきます。この度は本当にご迷惑をお掛けしました。

と言われ、電話を切らました。

 

この後、上司からTさんのもとへ連絡が行き、商品の回収作業を止めてもらい、コンテナ等は元の場所に戻してもらいました。

これで何とか今月、来月と事業を継続できそうです。(もちろん、その後の見通しも立ってます。)

 

大手企業といえど、こういうケースは今でもよく見かけます。

法務部門であれば、当然に知っている事ではあると思いますが、末端の社員となると、話は別です。自力救済を知らない事が多いです。また、役職者がかなり上の方でも、知らないケースが少なくありません。

支社長という肩書がついていても、「自力救済って何ですか?」等と真顔で質問されるケースは少なくないのです。

 

2009年に、私の家でも同様のケースがありました。

取引先が上場企業でしたが、「自力救済」が違法行為という事を知らず、私の警告を無視しながら商品を4tトラックに黙々と積み込んでました。

最終的には止めさせましたが、こうしたケースは今でもたまに目にします。

 

卸してもらった商品を勝手に回収するのは違法行為ですから、こういった場合は、断固として止めさせなければいけません。もちろん、支払いが遅れているこちらに非がある以上、言い難い部分はあるとは思いますが、違法行為である以上、黙って見過ごすのはダメです。

まあ、事業継続を諦めるのであれば、卸してもらった商品を全て返品するのは構わないと思いますが、継続するなら話は別です。

絶対に止めさせて下さい。

資金繰りが厳しくなると、いろんな問題が勃発し、心が折れそうになることもあると思いますが、くよくよせずに、一つ一つ問題を片づけていきたいものですね

気に入っていただけたらシェアお願いします。

メールマガジン

55件の相談事例を記載した冊子を無料でプレゼントします。

この相談事例は、2009年のブログ開設から、2014年11月までにブログのコメント欄に書き込まれた質問をまとめた冊子となります。

実際にいただいた相談事例や、解決事例が記載されていますので、興味のある方はメールマガジンをご登録下さい。

ご登録頂けるとすぐに読めます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

ABOUTこの記事をかいた人

1977年神奈川県生まれ。コンサルティング会社勤務を経て独立。店舗ビジネスに特化したコンサルティング業務を展開していたが、身近な人の倒産を目の当たりにした事をきっかけに事業再生に目覚め、平成21年5月より、事業再生に参入。全国各地の中小企業の再生業務に関与し、中小企業の事業再生のサポートを行っている。 平成23年8月、M&Aに特化した株式会社クレアークを設立、代表取締役に就任。現在に至る。業務の幅を広げる事により、サポートの幅を広げている