信用保証協会に代位弁済された債務の時効は何年?【結論:5年】

信用保証協会に代位弁済された債務の時効は何年?【結論:5年】

信用保証協会(以下、「保証協会」といいます。)に代位弁済された債務の時効は何年ですか?

法律が変わったりして、5年なのか10年なのかよく分かりません。

時効はいつからカウントされるのか、詳しく知りたいです。

本記事では、こういった疑問・要望にお答えします。

本記事の内容
  • 保証協会に代位弁済された債務の時効は5年【結論】
  • 保証協会に代位弁済された債務の時効成立が難しい理由1つ
  • 保証協会に代位弁済された債務の時効に関するよくある質問

なお、本記事の筆者は、2009年から現在まで中小企業の資金繰り改善コンサルタントとして活動しており、年商数百万の個人事業主から年商10億円以上の企業まで、幅広く対応してきました。

こういった経験をもとに、本記事では、保証協会に代位弁済された債務の時効や、時効の起算点を解説していきます。

法律の条文や実際の事例を交えて解説していきますので、代位弁済された債務の時効が気になっている方は、ぜひ参考にしてください。

なお、結論からいうと、保証協会に代位弁済された債務の時効は5年です。

目次

保証協会に代位弁済された債務の時効は5年【結論】

保証協会に代位弁済された債務の時効は5年です。

2020年(令和2年)4月1日、改正民法が施行され、時効の規定や名称が変更されましたが、代位弁済の債務の時効は改正民法施行前、施行後変わらず5年です。

旧民法新民法
2020年(令和2年)3月31日以前に成立した債権2020年(令和2年)4月1日以降に成立した債権
貸し手が商人5年
貸し手が商人ではない場合10年
5年
商事時効(5年)は廃止

参考資料 法務省 消滅時効に関する見直し(PDF) [420KB]

(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

出典:民法 第166条第1項 | e-Gov法令検索

保証協会に代位弁済されてから、5年間返済を止め続ければ時効になります。

時効の起算点は代位弁済の実行日

時効の起算点(カウント)は代位弁済の実行日となります。

代位弁済の実行日は保証協会から届く書面に記載されています。

「令和2年6月20日、〇〇銀行の代位弁済請求に応じて代位弁済を実行しました」などと記載されていれば、起算点は「令和2年6月20日」になります。

返済を止めた日とは無関係なのでご注意ください。

時効の起算点は返済を止めた日ではありません。返済を止めている時点では銀行が債権を有していますので、保証協会は債権を有していません。

例えば、保証付き融資の返済を毎月25日に行っている場合。
2月25日に返済しなければならないところ、資金繰りが厳しく、返済できませんでした。
翌月・翌々月も返済できず、90日以上返済したことで期限の利益を喪失しました。

  • 保証付き融資の返済日(返済できなかった) → 令和2年2月25日
  • 期限の利益喪失日 → 令和2年5月26日
  • 保証協会が銀行に代位弁済を実行した日令和2年6月20日(この日が時効の起算点)

保証付き融資を90日以上延滞し、期限の利益を喪失すると、銀行は保証協会に対して代位弁済請求します。銀行からの代位弁済請求に保証協会が応じて肩代わり弁済を行い、保証協会が求償債権を取得した時点が時効の起算点となります。

時効を更新されなければ消滅時効を援用して時効成立

時効の起算点から5年以上経過し、その間、保証協会から一度も時効を更新されなければ、消滅時効を援用すれば時効成立です。

つまり、保証協会に代位弁済された債務は消滅します。

時効の更新とは

債権者から請求(内容証明・支払督促など)があったり、差押え・仮差押え・仮処分を受けたり、債務を承認すると時効は更新します。

時効を成立させるには、時効の援用をしなければなりません。

ただし、時効成立は難しい

法律の条文どおりに考えれば、これまでの説明で時効は成立するのですが、残念ながら時効成立は難しいです。

「代位弁済後、5年以上返済しなければ時効で債務がなくなる」などと考えない方がいいでしょう。

なぜ、時効成立が難しいのか、次の項目で解説していきます。

保証協会に代位弁済された債務の時効成立が難しい理由1つ

保証協会に代位弁済された債務の時効成立が難しい理由は下記1つです。

  • 時効の更新をされるから

上記のとおり

時効の更新をされるから

時効が到来しそうな時期が近づいてくると、保証協会は訴訟を起こしてきます。

争っても無意味なので、淡々と裁判は進行し、裁判は確定します。確定判決が出ると、権利の確定から新たに時効が進みます(リセットされます)。

ちなみに、確定判決が出ると、時効期間は10年延長します。(民法169条1項)。

(判決で確定した権利の消滅時効)
第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。

出典:民法 第169条第1項 | e-Gov法令検索

以上が時効成立が難しい理由です。続いて最後に、保証協会に代位弁済された債務の事項に関するよくある質問とその答えを解説していきます。

保証協会に代位弁済された債務の時効に関するよくある質問

保証協会に代位弁済された債務の時効に関するよくある質問は下記3つです。

  • 時効の更新は必ずされますか?
  • 永遠に時効を更新されるのですか?
  • 連帯保証人ですが、5年以上返済しなければ時効になりますか?

上記のとおり。

時効の更新は必ずされますか?

基本的に、保証協会が回収を諦めることはありませんので、必ずと言っていいほど時効は更新されます。

永遠に時効を更新されるのですか?

基本的に、時効間際になると訴訟を起こされ、時効を更新されます。永遠に更新されるものと考えておいて大きな間違いはありません。

債権の一部を対象に訴訟を起こすケースあり【実質的な債務免除】

永遠に更新されますが、1~2回目の訴訟の時に減額されるケースがあります。

例えば、本来、保証協会に対して1億3千万円の債務を負っているのに、裁判所の訴状を見ると訴訟額が2,000万円に減っていることがあるのです(実質的な債務免除)。

筆者のお客様から聞いた事例です(事例は1件だけではありません)。

つまり、保証協会は1億3千万円の債権を有しているのに、訴訟を起こす時は1億3千万円の債権の一部となる2,000万円だけを訴訟で請求し、残りの1億1千万は訴訟の対象から外した状態で訴訟を起こしてくるのです。

2,000万円は時効の更新対象となりますので、確定判決が出れば時効期間は10年延長しますが、1億1千万円は時効の更新対象から外れますので、時効が到来すれば時効となります。

時効を援用をすれば1億1千万円の債務は消滅します。

連帯保証人ですが、5年以上返済しなければ時効になりますか?

主債務者次第となります。

主債務者が1円でも返済していれば債務を承認している訳ですから、連帯保証人は時効にならないです。

主債務者が5年以上返済しておらず、訴訟もされなければ時効になります。

筆者の仕事柄、下記のようなケースをよく見聞きしますが、主債務者が1円でも返済していれば時効にはならないです。

  • 主債務者 → 少しずつ返済している
  • 連帯保証人 → 代位弁済をきっかけに主債務者と疎遠になり、返済状況は全く分からない。債権者から全く連絡(請求)がこないので時効になったと思い込んでいる。

このことについて、民法では下記のように規定しています。

(主たる債務者について生じた事由の効力)
第四百五十七条 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる。

出典:民法 457条 | e-Gov法令検索

つまり、主債務者が債務を承認したり、保証協会から訴訟を起こされて時効が更新していれば、連帯保証人の債務の時効も更新するのです。

まとめ

以上、保証協会に代位弁済された債務の時効について解説しました。

5年間、時効の中断をされなければ時効が到来しますので、時効の援用をすれば債務は消滅します。

ただし、時効が到来しそうな時期が近づいてくると訴訟を起こされるので、時効は更新し、10年延長します。ですので、実質的に永遠と請求されることになります。

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