資金繰りでお悩みの方から相談を受けて「破産した方が良い」と勧めた2人のケース

資金繰りが厳し過ぎる、あるいは負債が多過ぎて「破産」という2文字が頭を過る方向け。

中小企業が銀行から借入を起こす際、経営者個人が借入の連帯保証を入れるのが一般的です。

そのため、事業から撤退すると法人の負債が経営者個人に全てのしかかってきます。

保証債務を整理する方法は「【銀行融資】連帯保証を外す事はできる?【経営者保証ガイドラインを活用すれば可能】」という記事でも解説しているとおり、
条件次第では「経営者保証に関するガイドライン」の廃業支援を活用する事で破産しなくても負債を整理する事が可能です。

ただし、条件が合わなかったり、支援専門家の費用(弁護士費用)が準備できないと、破産 or 放置、という2つの選択肢から今後どうするかを選ぶことになります。

目次

資金繰りが苦しいと相談されて破産を勧めたケースは過去2人

借入の返済できなくなった時の解決策として、「破産」するか「放置」するかといった2つの選択肢があります。

ですので、ご相談を受けた筆者が破産ありきで話を進めるようなことはないのですが、過去2人の方に「破産した方が良い」と、破産を勧めたことがあります。

破産を勧めたケースは次の2つです。

  • 1人目のケース:精神衛生上、好ましくないと判断したので破産を勧めた
  • 2人目のケース:近い将来多額の資産を相続する可能性があったので破産を勧めた

順番に解説していきます。

精神衛生上、好ましくないと判断したので破産を勧めた

事業継続を断念し、会社経営から撤退すると、会社で融資を受けた借入金の保証債務が経営者個人にのしかかってきますので、債権者から経営者個人に対して請求を受けるようになります。

とはいえ、連帯保証債務の請求に対しては、「破産」若しくは「放置」という2つの選択肢があり、どちらを選ぶかは経営者様次第なので、筆者の方から「破産した方が良い」と伝える事は基本的にはありません。

決まって「とりあえず放置しておけば良い。」と伝えます。

それに、以下の記事でも解説しているとおり、債権には時効がありますから、時効が到来した時に時効を援用すれば負債は消滅するからです。

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そのため、破産するしないについて聞かれたら、以下のようにお伝えしています。

  • 自分の名義で資産を持ちたければ破産した方が良い → 破産しないと自己名義の資産が持てないから
  • 自分名義の資産を持たないという事であれば放置しようが破産しようがどっちでも良い → そもそも時効があるから
  • 人の気持ちは変わるものだから、今決断する必要はない → 破産の申立ては金を払えばいつでもできるから

債権者の回収行為も慣れてくる

事業を撤退する事を決断し、返済を止めると、債権者からバンバン連絡がくるようになります。

連絡がくるとはいえ、撤退すると決めている訳ですから、相手をしてもしなくてもどちらでもよくなります。

また、返済を止めて期限の利益喪失となると、内容証明や裁判所から特別送達が届くようになります。

この時点でも特に大きな問題になるような事は全く無いのですが、中には不安に感じて連絡してくる方もいます。

でも、淡々と「3ヶ月も経てば慣れますよ。」と伝えると、やはり、殆どの方が慣れてきますので、こうなると「破産してもしなくても本当にどっちでも良いのですね。」という事をご理解いただけるようになります。

慣れたことによって、冷静に考える事ができるようになり、ここでようやく「破産してもしなくてもどちらでも良い」という事が腑に落ちるのだと思います。

債権者の回収行為に慣れず、精神が病むぐらいなら破産した方が良い

ただ、全員が全員、このような方ばかりではありません。

なかには債権者の回収行為で精神的に病んでしまう方もいます。

裁判所から特別送達が届くたびに神経をすり減らし、債権者が家に訪問してきて呼び鈴を鳴らされる度に気が滅入ってしまい、精神的に病んでしまう方もいます。

このような方は、訴状が届いたり、債権者が訪問してくる度に連絡してくるので、その度に「別に何も起こりませんし、そのうち慣れますよ。」と伝えます。

しかし、何度も「そのうち慣れる」とお伝えしても、「どうしても慣れない」、「不安しかない」、「睡眠もロクに取れない」、「精神的に耐えられない」と言うので、

この方には「破産すれば弁護士が対応してくれますから、破産した方が良いかもしれません。すぐにお近くの弁護士事務所か法テラスに相談して下さい」と伝えた事があります。

保証協会サービサーや、カード会社は訪問してきます。

といっても、保証協会サービサーは非常に紳士的ですし、
カード会社は最初のうちに数回来るだけなので、相手をしたくなければ居留守を使えば良いだけです。

近い将来多額の資産を相続する可能性があったので破産を勧めた

破産を勧めた2人目の方、この方は結構レアケースでした。

最初にご相談依頼を受けた時は、

  • 年商は直近3年間、5億~6億円あたりで推移している
  • 金融機関の借入は3億前後
  • 1億5千万程度の債務超過状態
  • 小売りと卸売りを営んでいるが、小売りは年々落ち込んできているので、卸売りに専念したい
  • 第二会社方式を使えたら良いと考えている

という事で相談を受けたのですが、詳しい状況をヒアリングしているうちに、近い将来、母親から時価にして2億数千万円相当の土地を相続する可能性が高いという話を伺いました。

不謹慎な話なのであまり突っ込んで聞くのもどうかと思いましたが、思い切って「なぜ、近い将来と分かるのですか?」と社長に伺ってみると、

「すでに入院してまして、担当医が言うには半年もつか、1年持つか分からない。経過が良さそうなので1年半ぐらい持つ可能性もあるが、具体的に何時までもつかというのは分からない。と言われたんですよ」と言われました。

社長には兄弟はおらず、お母様がお亡くなりになれば社長はその土地を相続することになります。

事業継続すると相続を受けても結局は回収される可能性が、、、

ご相談を受けた当初、「第二会社方式で事業継続したい」という相談内容も、せっかく相続を受けたところで回収されてしまう可能性があるなら…という話になりました。

第二会社方式に関する詳しい解説は以下の記事をどうぞ。

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そして、最終的には不謹慎な話ではあるのですが、無理して事業継続するより、早めに破産して相続を受けた方がメリットが大きい(比べ物にならないぐらい)と判断したので、破産を勧めました。

社長はその場で決断され、1ヶ月という短期間で会社を閉める準備をされ、その後、すぐに破産手続きをしました。

破産開始決定後、またすぐに同じ事業を立ち上げ、負債ゼロで再スタートを切りました。

ちなみにこちらの社長、筆者が定期購読しているサービスに2~3週間に1度ぐらいの割合で社長の顔写真が掲載されるので、お元気な姿をほぼ毎月確認できています。

笑顔で商品をアピールしている写真を見る限り、順調なのではないかと思っています。

まとめ

2009年5月から現在まで、資金繰りにお悩みの中小企業経営者様からご相談依頼を受けてきましたが、「破産した方が良い」と勧めたのはこの2名だけです。

その他の方には破産ありきで話をした事はありません。

全く返済ができないという状況に追い込まれても、また、どんなに多額の負債を抱えたとしても、誰でも等しく「破産」、若しくは「放置」という2つの選択肢を自由に選ぶ事ができるので、「返せなくなったら破産するしかない」等と思考停止してしまうのは非常にナンセンスだと言えます。

放置の場合、債権放棄というソリューションもありますので、破産するなり放置するなり、お好きな方法を選択すれば良いと思います。

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