再生計画の策定は、相応の時間が必要なのです。

事業再生

前回、再生計画を作るのはすぐにはできないというお話をしましたが、これについて、こんなエピソードがあります。

事業再生は時間がかかる。再生計画の策定はとくに。
資金繰りが厳しくなってくると、いろんな焦りが出てくると思います。気持ちは痛いほど理解できるのですが、たまに、冷静さを欠いてしまうあまり、スケジュールばかり気にされる方がいます。 どのような事かと言いますと、 「今月中に具体的な再生...

一昨年の年末の事です。あと2週間で年越しを迎えるという時に、面談相談の申込を受けました。メールの内容を見る限り、とにかくすぐに来て欲しいとの事だったので、2日後に飛行機で向かいました。

片道6時間近くかけて、会社に着きました(エライ遠かったです)。

挨拶もそこそこに、早速、お話を伺うことにしました。

 

お話の内容は、

  • このままだと倒産確実なので、再生支援協議会(以下、「再生協」)に相談に行った。
  • 運良く2次対応に進み、再生協の支援を受けることになった。
  • デューデリジェンスもしてもらい、再生計画を策定してもらったが、内容が気に食わない。
  • だからあなたに来てもらった。

という内容でした。

ちなみに、デューデリジェンスの費用で600万円かかったが、県と市が300万づつ負担したから、1円も払っていないとの事でした。なんともラッキーな方です。

今日の本題でもある、再生協の策定した内容とやらを聞かなければと思い、

筆者
筆者

再生協の策定した再生計画のどのあたりが気に食わないのでしょうか?

と質問したら、このような返答が返ってきました。

社長
社長

当社は○県を中心に、隣県と合わせて20店舗展開しています。

今期の決算時に個別店舗の収支状況を調べてみたら、黒字店舗が10店舗でした。

5店舗は収支トントンの状態で、5店舗は大幅な赤字です。

 

ですから、黒字店舗だけを残し、収支トントンの店は、後身に譲るか、知人の会社に売却を打診する。赤字の店はすぐにでも撤退(閉鎖)したい。

 

これが私の希望です。

 

しかし、再生協の策定した内容によると、黒字店舗を売却し、売却によって得た資金を、各債権者の弁済に充てる。

 

収支トントンの店は立地が悪くないので、収益改善を図り、継続していく。赤字店舗は閉鎖若しくは、経営権を譲渡するといった内容なのです。

 

黒字の店舗を売ったら、そこで終わりじゃないですか!債務を弁済するのは当然だとしても、我々は飯を食うなという事か!

と、ご立腹の様子。

まあ、これについては様々な議論があると思いますが、私がパッと見た感じ、ただの解体に過ぎないという印象を受けました。

社長
社長

こんなバカな計画は気に入らないので、自社で再生計画を策定し、次ぎのバンクミーティングの時に提出したい。

だから、今日瀬間さんに来て貰った。

との事でした。

 

なるほど。と納得したのもつかの間、社長から大量の資料を手渡されました。決算書はもちろん、個別店舗の収益状況、デューデリジェンス資料などなど、厚さ2センチのボリュームです。

これ全部に目を通すのかと思ったら、ちょっと眩暈がしましたが、なんとか資料を読み込みました。これで終わりと思いきや、

社長
社長

書類だけでは見えてこない部分もあると思いますから、実際に店舗を見て下さい。私がご案内します。

という事で、社長の車で6店舗ほど見てまわりました(帰りの飛行機の時間もあったので、6店舗が限界でした)。

店舗の視察を終え、会社に戻り、話し合いを再開したのですが、そこでこんな事を言われました。

社長
社長

ほぼ全ての資料を見ていただきましたが、再生協の解体メインの計画ではなく、黒字店舗を残す事を目的とした計画を今すぐ提案して下さい。

筆者
筆者

えっ、今ですか?

今すぐと言われ、若干困惑してしまいました。今すぐというのは正直不可能と思ったので、私はすかさず、次のように言い返しました。

筆者
筆者

社長、いいですか。

確かにほぼ全ての資料に目を通しましたし、プロが作ったデューデリジェンスの資料も拝見しました。

 

利害関係者との相関関係に関する一覧表などもありますので、わざわざヒアリングしなくても、資料を見ればだいたい分ります。でも、大体しか分りません。

 

具体的に把握するには圧倒的に時間が足りません。大枠はこの場でご提案できますが、それが本当にベストなのか、正直疑問です。

 

考える時間が必要ですし、実現に向けて、取引先との根回しも必要です。

 

また、収支トントンの店舗を後身に譲るとの事ですが、お話はされたのですか?全員断られたらどうするのですか?

 

社長がいくらそのように考えても、引き受けるかどうかを決めるのは現社員ですから、断られたら頓挫しますし、次ぎの手を考えなければなりません。

 

書類上では片付かない問題がたくさんあります。

 

今日、この場で計画を出して、数日後のバンクミーティングで計画を提出するなんて、不可能だと思います。その場しのぎの計画を持っていったら、それこそ相手の思う壺ですよ。

とにかく時間が少ないから無理だと説得しても、納得が行かない様子。

口を開けば「数日で計画を作り、バンクミーティングに間に合わせる」との一点張りで、話は平行線の一途でした。

このまま話し合いを続けても、飛行機の時間が間に合わなくなるだけなので、これで帰りますと前置きして、このように説明しました。

筆者
筆者

いくら資料が整備されたからと言っても、人の感情までは資料では分りません。

 

再生計画は時によっては人の感情を織り込んだ上で策定する事になりますから、資料があるからといって、すぐにできるようなものではないのです。

いい加減タイムオーバーなので、時間を頂ければ計画を策定しますよとだけ伝え、空港に向かいました。

 

このような例から分るとおり、数日、1~2週間、1ヶ月そこらで再生計画はできるようなものではありません。このあたりの実情を把握している経営者の方は、正直ほとんどいないのです。

なぜなら、たいていの場合で気持ちが焦ってますから、そこまで気が回らない事がほとんどで、尚且つ、

  • 専門家であればスグになんとかなる
  • それが専門家だろう

と考えている事が殆どですから、あまり時間がかかるという事が考慮されていない場合が多いのです。

計画の策定は時間がかかります。事業再生を決断するタイミングは、早ければ早いほど良いのです。

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