倒産前に商品を仕入れると取り込み詐欺で被害届を出される?【結論:ケースバイケース】

取引先から商品を仕入れて販売しているけど、思うように商品が売れない。このままだと倒産だよ…。

商品を仕入れて倒産したら、取引先から取り込み詐欺と勘違いされたりしないかな。もし、訴えられたりしたら困るよ。

倒産前に仕入したら、後で取り込み詐欺で訴えらたりするかどうか知りたい。

この記事では、こういった疑問にお答えします。

目次

倒産前に商品を仕入れて取り込み詐欺で被害届を出されるかはケースバイケース【結論】

取引先から商品や原材料を仕入れた際に、支払いの目途が立っていれば何の問題もありませんが、業績が悪化し、資金繰りが厳しくなると、取引先への支払いの目途が立たなくなる場合があります。

最悪の場合、商品や原材料を仕入れたにもかかわらず、売上がほとんど立たず、支払いが困難な状態に陥ってしまい、倒産することもあります。

このような時、商品や原材料を仕入れしまったにもかかわらず、支払いができずに倒産した場合、取引先から「取り込み詐欺」と訴えられるのでは?と心配される方が少なくないですが、

結論から言うと、商品や原材料を仕入れした直後に倒産した場合、取引先に取り込み詐欺で被害届を出されるかはケースバイケースです。

きちんと対応しておけば被害届など出されるような事はありませんが、対応がお粗末だと被害届を出されることがありますので、注意しましょう。

倒産前に仕入れをして取り込み詐欺で被害届を出されやすいケース1つ

倒産前に仕入れをして取り込み詐欺で被害届を出されやすいケースは下記1つです。

  • 大量に商品を仕入れた直後に倒産する

上記のとおりです。

大量に商品を仕入れた直後に倒産する

商品や原材料を大量に仕入れて1ヵ月も経たないうちに倒産してしまうと、取引先から取り込み詐欺で被害届を出される可能性が高まります。

これは逆の立場で考えれば分かると思いますが、取引先の立場からすると、「払える見込みが無いとある程度分かっているはずなのに、なぜ、大量に発注してきたのか?最初から飛ばす(払わない)つもりで発注してきたのでは?」と考えるのが自然だからです。

もちろん、支払いができなくなる企業側の事情も色々あると思います。

  • 当てにしていた売掛の入金が先延ばしになった(期日に払えないのでジャンプして欲しい・分割払いにして欲しい等とお願いされた)
  • 大口の入金予定があったが取引先が倒産した
  • 金額の大きい受取手形が不渡りになった

上記のように予期せぬ理由で、急きょ資金繰り予定が大幅にズレてしまい、払えなくなってしまったという事情もあると思います。

とはいえ、そのような事情を知らない、商品を納品した取引先からすると「大量に仕入れておきながら倒産するなんて、払えないことが事前に分かっていたはず。」と考えますから、状況的に「取り込み詐欺にあった」と思われてしいます。

倒産前に仕入して取り込み詐欺の被害届を出されなくするための対処法3つ

倒産前に仕入して取り込み詐欺の被害届を出されなくするための対処法は下記3つです。

  • 仕入れたものは可能な限り返品する
  • 倒産する事が分かったら発注しない
  • できる限りのアフターフォローをする

上記のとおりです。

仕入れたものは可能な限り返品する

すでに使用してしまったものは致し方無いですが、在庫として倉庫や店頭に並べているものは、可能な限り返品した方が良いです。

返品してあげないと、納品した側に「商品を盗られた」と思われ、被害届を出されてしまうことに繋がりますので、使用していない物はできる限り返品するようにしましょう。

倒産する事が分かったら発注しない

「このままだと倒産確実」という事がわかったら、その時点で発注しない方が良いです。

迷惑をかけてしまう相手をいたずらに増やすだけです。

払う当てがあるなら仕入れても良いと思いますが、払う当ても無いのに仕入れてしまうと、後々トラブルを招くことになりますので、払える見込が無ければ止めましょう。

できる限りのアフターフォローをする

商品や原材料を大量に仕入れておいて、払えなくなったとたん会社を閉めてしまうと、取引先の怒りの感情は高まります。

取引先に支払いができず、バツが悪くなってしまい、連絡できずにいるという気持ちも理解できますが、大量の商品を納品して全く回収できないという状況からすると、取り込み詐欺にあったと思われても仕方がありません。

確信犯的に仕入れた訳では無いとはいえ、可能な限り返品するなど、アフターフォローに努めましょう。

倒産前に商品を仕入れて取引先から取り込み詐欺で被害届を出された実例紹介

最後に、倒産前に商品を仕入れて取引先から取り込み詐欺で被害届を出された実例を紹介します。

10年以上前のことですが、筆者が関与したクライアント様が取引先から取り込み詐欺で被害届を出され、警察から筆者のところに問い合わせがありました。

その時の様子を会話形式でご紹介します。

被害届を出された実例

2011年の冬だったと思いますが、筆者の携帯に見知らぬ番号から電話がかかってきました。

誰だろうと思いながら電話に出てみると、それは意外な人物からの電話でした。

刑事

もしもし、ダヴィンチパートナーズ合同会社、代表の瀬間さんのお電話でしょうか。

筆者

はい、私ですが…(誰だろう?なぜ私の携帯番号を知っているのかな?)。

刑事

お休みのところ申し訳ございません。
私、I警察刑事課の武田(仮名)と申します。
早速ですが、瀬間さんはS社はご存じでしょうか。

電話の相手はなんと刑事さんからでした。

久しぶりにS社という名前を聞いたと思ったのも束の間、S社の社長に何かあったのかと思い、その旨聞いてみたところ、意外な返答が返ってきました。

筆者

S社とは2009年の夏頃から半年間、顧問契約を締結して、お手伝いさせて頂きましたが、それが何か?
もしかしてS社の社長が何かの事件に巻き込まれたのですか?

刑事

いえいえ、そうではありません。
そのS社ですが、実はですね、S社の取引先から取り込み詐欺の被害届が出ておりまして、それで捜査の協力をお願いしたいと思いご連絡させて頂きました。

筆者

はい?取り込み詐欺ですか?
あの社長がですか?

あの社長に限ってそんな事する訳が無いと思いましたが、刑事さんもいたずらで電話してきている訳ではないと思ったので、状況を聞いてみる事にしました。

筆者

取り込み詐欺って、最近の事ですか?

刑事

いえ、2010年の頭ですね。

筆者

2010年だと確か…でしたよね?

刑事

そうなんですよね。
我々も被害届が出ている以上、捜査しなければならないので、当時の状況を覚えている範囲で構いませんので、教えて頂けないでしょうか。

筆者

ある程度は覚えてます。
あれは確か…。

と、ここから15分ぐらい、時系列に沿って説明したと思います。

筆者が全ての説明を終えた後、刑事さんは十分納得した感じで

刑事

お休みのところご協力いただき、ありがとうございました。
恐らくこの内容では立件できないので、事件にはならないと思います。
もし万が一事件になりましたら、またその際はご協力をお願いします。

筆者

分かりました。
その際はできる限り当時の資料を集めておきます。

という感じで、刑事さんとの電話のやりとりが終わりました。

倒産する直前に商品を仕入れると取り込み詐欺と思われやすい

小売業を営んでいたS社。

店舗数は10店舗以上あり、業歴も長く、地元でも有名な会社でしたが、大手小売りチェーンが近隣地域に出店してきてから、業績が悪化しました。

売上は下降の一途を辿り、窮境状態に追い込まれました。

経営を立て直したいという事で依頼を受け、顧問契約を締結したのですが、2010年の正月明けに社長が突然「もう年だし、これ以上気力も続かないので破産する」と言い出したので支援を打ち切りました。

ここまでの流れで、取り込み詐欺うんぬんという事はないのですが、問題はここからです。

閉店セールにて仕入れた商品を販売

筆者との契約を解除した2ヵ月後、取引先から仕入れた商品を閉店セールで処分し、閉店セールの直後、破産手続きをしたそうです。

この一連の行為が、取引先から「取り込み詐欺だ!」という事で、被害届を出されてしまったのです。

ちなみに、刑事さんから確認した、被害届を出した取引先の言い分は次のとおりです。

  1. 払えないと分かったうえで商品を仕入れ、商品を閉店セールで売っ払った。
  2. 卸した商品代金は1円も貰ってない。
  3. 経営が実質的に破綻状態にあると分った上で商品を仕入れたということは確信犯である。

刑事さんと話をしていて分ったのですが、取引先も逆恨みのような感情で被害届けを出してきたのです。

刑事さんと話した後、早速、社長に電話で確認してみたら、そのような感じの回答が返ってきました。

社長

あ~、瀬間さん。
すいませんね、迷惑かけたみたいで。

実はK社が「財産を隠してるんじゃないか」って、あちこちに言いふらしてるみたいなんですよ。
私は今、年金だけで暮らしているんですけどね~。

筆者

そうなんですね。
なぜ、あのK社が今になって被害届けを出すんでしょうね。

社長

恐らく、会社が倒産した時に財産を隠したと思ってるみたいなんですよ。

実は今、娘夫婦の会社の手伝いをしているのですが、私の娘が「会社の車を自由に使って良い」と言うので、娘夫婦の会社の車を私が乗り回しているんですよ。

筆者

へー、そうなんですね。
まあ、よくある話だと思います。

ちなみに車種は?別に普通の車ですよね?

社長

普通…。う~ん、普通のドイツ車のセダンです…。

実は、K社の幹部に私が車を運転しているところを目撃されてしまい、「破産して年金暮らしのハズなのに、ドイツ車に乗ってるなんておかしい!絶対あの時に財産を隠したハズ」などと騒ぎ出したみたいなんですよね…。

筆者

あ~…。なるほど。
そういう事ですか。

社長

先日、M駅のロータリーに車で妻を迎えに行ったのですが、その時、私が車を運転しているところを見られてしまって、それでこんな事になってしまったんですよ…。

筆者

なるほど…。

社長

私は別に悪い事は一切してませんし、車だって娘夫婦の会社の借り物ですから、全く関係無い訳です。

狭い街だから目立つんでしょうね、きっと…。

筆者

社長が破産したことを知っている人が見たら、確かに怪しまれますね。
こればかりは仕方ありませんね。

と、後は軽い雑談をして、電話を切りました。

過去、似たようなケースで警察から問い合わせがあった事がありましたが、その時は事件性が無いという事で、そのまま終わりました。

倒産することが判明したら、仕入れるのを止めたり、万が一仕入れてしまったら商品や原材料をできる限り返品した方が良いという好例だと思います。

まとめ

商品を盗るつもりなど全く無いのに、取引先から取り込み詐欺だと言いがかりをつけられたり、被害届を出されてしまってはたまったものではありません。

もちろん、払えない側が悪いのは間違いないのですが、払えないものはどうあっても払う事はできないので、もし、仕入れてしまったけど、倒産する可能性が非常に高いというような時は、できる限り返品するようにしましょう。

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