求償権消滅保証とはどんな保証制度?代位弁済の求償権を借換える仕組みについて解説

求償権消滅保証とはどんな保証制度?代位弁済の求償権を借換える仕組みを解説

代位弁済した事業者でも、再び銀行から融資を受けることができる「求償権消滅保証」という保証制度があるみたいだけど、どのような制度なのかな?

制度の内容や、保証を受けるための条件を詳しく知りたい。

この記事では、こういった疑問にお答えします。

本記事の内容
  • 求償権消滅保証とは
  • 求償権消滅保証を受ける要件・方法

この記事を書いている筆者は、2009年から現在まで中小企業の資金繰りや事業再生コンサルタントとして活動しております。

こういった経験を元に、この記事では、求償権消滅保証について詳しく解説します。

目次

求償債務を負っている限り銀行融資は不可能

代位弁済後に業績が回復してくると、運転資金の増加や老朽化した設備を修繕するためのまとまった資金が必要になるケースが多々あります。

ちなみに、代位弁済の詳しい解説は「【保存版】信用保証協会に代位弁済されるとどうなる?【網羅的に解説】」をどうぞ。

ノンバンクやファクタリングであれば、資金調達できる可能性が高いですが、なるべくなら低利の銀行融資を受けたいところです。

しかし、業績が回復しても信用保証協会の求償債務を負っている限り、銀行のプロパー融資はもちろん、保証付き融資を受ける事はできません。

どんなに決算書の内容が良くても、借入金及び支払利子の内訳書に「信用保証協会」と記載されている限り、銀行融資は100%不可能です。

ですので、代位弁済を受けた企業がもう一度銀行融資を受けるには、信用保証協会に対する求償債務を完済しない限り、融資を受ける事は不可能なのです。

また、「銀行融資をリスケすると信用情報に影響する?【結論:影響なし】」という記事でも解説しているとおり、代位弁済を起こすと個人信用情報に代位弁済を起こした事実が残りますので、この点からも非常に難しいといえます。

求償債務を借換えさせる保証制度がある

どんなに業績が回復しても、決算書の借入金及び支払利子の内訳書に「信用保証協会」と記載されている限り、銀行融資はもちろん、日本政策金融公庫からの融資も不可能です。

しかし、求償債務を借換えさせる「求償権消滅保証」という保証の枠組みを利用する事で、再び銀行から融資を受けることができるようになるのです。

求償権消滅保証とは

「求償権消滅保証」とは、信用保証協会の保証付き融資が代位弁済となり、正常な金融取引ができなくなってしまった事業者の救済措置となる保証制度です。

この保証を受けると、正常な金融取引ができるよう求償債務を借換えることができ、再び銀行から融資を受ける事ができるようになります。

求償権消滅保証の仕組み

信用保証協会から「求償権消滅保証」という新たな保証をつけてもらうことで、求償権消滅保証付きの融資を銀行から受ける事ができます。

この融資を受けたお金で信用保証協会に対して求償債務を返済します。

これにより、決算書の借入金及び支払利子の内訳書から「信用保証協会」という記載が消えますので、今後は正常な金融取引ができるようになるという仕組みです。

求償権消滅保証の流れ

求償権消滅保証の具体的な流れは以下の通りです。

求償権消滅保証の流れを解説した図
  1. 求償権消滅保証を付ける:3,000万円の求償権消滅保証を付ける。
  2. 保証付き融資の実行:3,000万円の求償権消滅保証を受けた銀行は、企業に3,000万円の融資を実行する。
  3. 保証協会へ返済する:3,000万円の求償権消滅保証付きの融資を受けたら、その資金で求償債務の弁済に充てる。
  4. 毎月返済する:信用保証協会に対する求償債務は完済となり、以降は約定通り銀行へ返済する。

「求償権消滅保証」を活用すると、決算書の借入金及び支払利子の内訳書から「信用保証協会」という記載が無くなり、新たに融資を受けた銀行名が記載されるようになります。

つまり、「代位弁済前の状況に戻る」ことができるのです。

求償債務が無くなるので銀行や政策公庫から融資を受ける事ができるようになる

決算書の借入金及び支払利子の内訳書から「信用保証協会」という記載が無くなるので、資金が必要になれば、通常の保証を保証協会から付けて貰い、銀行融資を受けられるようになります。

また、日本政策金融公庫からも融資を受ける事ができるようになります。

求償権消滅保証を受ける要件・方法

求償権消滅保証は、代位弁済を起こした企業に対して新規の保証を付ける事になるので、当然、ハードルは高いです。

一度は信用を失った企業に対して融資を実行することになるので、

  • 業績が回復した → 求償権消滅保証を付けましょう!

というような簡単な話ではありません。

ある程度の期間、きちんと返済を続けた企業が対象となります。

求償権消滅保証の要件

求償権消滅保証を受けるには、以下の要件に合致した企業だけが保証を受ける事ができます。

(1)求償権消滅保証の要件となる計画

  1. 中小企業再生支援協議会が策定を支援した再建計画
  2. 独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」という。)が策定を支援した再生計画
  3. 中小機構が出資を行った投資事業有限責任組合が策定を支援した再建計画
  4. 株式会社整理回収機構が策定を支援した再生計画
  5. 株式会社地域経済活性化支援機構が株式会社地域経済活性化支援機構法第 25 条の規定により再生支援決定を行った事業再生計画
  6. 特定認証紛争解決事業者による特定認証紛争解決手続に従って策定された事業再生計画
  7. 私的整理に関するガイドラインに基づき成立した再建計画
  8. 特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律(以下「特定調停法」という。)に基づく調停における調書(同法第 17 条第1項の調停条項によるものを除く。)又は同法第 20 条に規定する決定において特定された再生計画
  9. 経営サポート会議による検討に基づき作成又は決定された事業再生の計画であって、中小企業診断士、税理士又は公認会計士のいずれか1名(信用保証協会の役職員(退職者含む。)である場合を除く。)が策定を支援したもの。

出典:求償権消滅保証事務取扱要領 | 新潟県信用保証協会

要件は9項目ありますが、実際に保証を受けるとしたら「⑨経営サポート会議による検討~」の可能性が高いです。

理由は、実際に求償権消滅保証を受けた方や提案を受けた方が、経営サポート会議を受けて保証が付いたからです。

そもそも、①~⑧は中小企業にはハードルが高すぎます。

信用保証協会だけに対して返済してもNG

求償権消滅保証を受けるには、信用保証協会の求償債務の返済はもちろん、他債権者に対してもキチンと返済を続けているという事が前提になります。

つまり「求償権消滅保証を受けるために、信用保証協会だけに返済しよう」というように、偏った返済をすると求償権消滅保証は受けられません。

具体的には、次のような対応をするとNGとなります。

  • 信用保証協会 → 求償権消滅保証を受けたいからどこよりも多く返済している。
  • 銀行・政策公庫 → 借してくれないから適当にしている。
  • 取引先 → 何年も払っていない買掛残がある。
  • 租税公課 → 滞納しがち、滞納を解消する努力が見られない。

他債権者に対する毎月の返済状況をモニタリングしている

信用保証協会は求償権消滅保証を受けるに値する事業者かどうか、毎月の返済状況をモニタリングしています。

そのため、信用保証協会だけでなく、他債権者に対しても等しく返済をし続けていることが求償権消滅保証を受ける条件となります。

ちなみに、信用保証協会のWebサイトに取り組み事例が公開されていますので、興味のある方は参考にして下さい。

参考リンク再生支援の取り組み事例 | 群馬県信用保証協会

実際に保証を受けことがある方から聞いた返済例

この記事を書いている筆者は、2009年から事業再生コンサルタントとして活動してますが、2009年から現在に至るまで、求償権消滅保証を受けた事がある方2名と、今現在提案を受けている最中の方1名の計3名の方とお会いしました。

この方々に共通しているのが、

  • 代位弁済の初年度は月1万円の返済をしていたが、業績が上向いてきたので月10万円以上の返済をするよう努力した。
  • 業績が回復基調にあったので、10万円返済していたところ、さらに返済額を増やすよう努力した。
  • 他債権者に対してもキチンと返済を続けてきた。
  • 租税公課の滞納はなし(滞納していた方もいましたが、すぐに滞納を解消した)
  • 代位弁済後4~5年ぐらい継続して返済を続けていたら、信用保証協会から「求償権消滅保証」という保証制度を活用してみないか?と提案を受けた。

という流れで求償権消滅保証を受ける事ができた。とおっしゃってました。

まとめ

以上、信用保証協会に代位弁済された後でも融資を受ける事ができる保証制度、求償権消滅保証について解説しました。

代位弁済されても、今後、二度と信用保証協会の保証がつかないという事はありません。

信用保証協会はもちろん、他債権者に対してもきちんと返済を続けていれば、新しい保証を獲得するチャンスが生まれます。

全ての債権者にきちんと返済を続け、業績も回復してこれば、失った信用も徐々に回復してきます。

そうなると、信用保証協会の方から、「求償権消滅保証という保証制度があるのですが…」と話を切り出してくれるようになります。

代位弁済を受けたからといって、「今後、二度と銀行融資を受ける事ができない」と諦める必要はないのです。

ちなみに、求償権消滅保証を狙うのが難しいという事であれば、以下の記事でも解説している通り、他にも選択肢はありますので、その中から今後の方向性を考えれば良いと思います。

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