信用保証協会は求償権を債権放棄してくれる?【結論:する事はあるけどハードルは高い】

  • 信用保証協会に代位弁済されたので毎月返済しているけど、今のままだと一生かけても完済できない。債権放棄とかしてくれないかな?
  • 知り合いから「信用保証協会に債権放棄してもらった」という話を聞いたけど、本当にそんなことがあるのかな?
  • 代位弁済された求償権は破産しないと消えないのかな?

この記事では、こういった疑問にお答えします。

この記事は更新日時点(2019年の日付)の見解に基づいて加筆・修正しております。

信用保証協会が求償権を放棄する事があります【結論】

結論から言うと、信用保証協会が求償権を放棄する事があります。

仕事柄、お客様から「債権放棄してくれた」という情報提供や、「先日、信用保証協会に呼ばれたので訪問したら提案された」という報告を受けますので、債権放棄するかしないかでいえば「債権放棄をする事がある」と断言できます。

誰でも債権放棄に応じてくれる訳ではない

ただし、残念ながら代位弁済すればその先は誰でも債権放棄してくれるのか?というと、答えは「No」です。誰にでも債権放棄に応じるような事は無いと言えます。

信用保証協会は代位弁済数を公表していますが、債権放棄した件数は公表していませんので、実際、どれぐらいの件数が債権放棄されているのか全く分かりませんが、債権放棄を全くしないという事は無く、債権放棄するケースもあれば、しないケースもあるという事になります。

代位弁済件数の詳細について以下の記事を参考にして下さい。

【銀行融資】保証付き融資の代位弁済件数の推移[平成23年4月~平成31年1月末]

2017.12.15

 

簡単に債権放棄に応じない3つの理由

信用保証協会が簡単に債権放棄に応じない理由は3つあります。

  • 信用保証協会は債権放棄の仕組みがない
  • 税金で運営されているから
  • モラルハザードが起こる可能性がある

信用保証協会は債権放棄の仕組みがない

民間の金融機関は回収不能な不良債権を債権放棄する仕組み(サービサーへの債権譲渡)がありますが、信用保証協会や政府系金融機関には債権放棄の仕組みがありませんので、債務者が「債権放棄して欲しい」と望んでいても、債権者である信用保証協会としては応じるのが難しいのです。

税金で運営されているから

信用保証協会が債権放棄しない理由にお金の出所が上げられます。

ご存知のとおり、信用保証協会や政府系金融機関は国民から徴収した税金でお金を貸しています。国民が納めた税金で保証をしているわけですから、建前上、なかなか債権放棄に応じてくれません。

真面目に納税している人だけがバカを見ることになりかねない

税金で成り立っている公的機関である信用保証協会や政府系金融機関が誰にでも債権放棄を許していたら、信用保証協会の保証付き融資を受けた事がない方々はどう思うでしょうか。

毎月給料から税金を天引きされているサラリーマンの方々からしたら、「何千万と借りれるだけ借りて、返済できなくなったら返済しなくて済むなら借りたもの勝ちじゃないか」と思いますよね。納税者の感情という観点からも、簡単に債権放棄する事は無いのです。

モラルハザードが起こる危険性がある

信用保証協会が求償権をあっけなく債権放棄していたら、今現在、まじめに返済している人はどのように感じるでしょうか。恐らく、「真面目に返済する人だけが馬鹿を見る」と思うのではないでしょうか。

例えば、あなたが資金繰りが決して楽ではない状況の中、信用保証協会に対して毎月きちんと返済を続けていたとします。そのような状況で、あなたの知人の経営者から「いや~、信用保証協会に債権放棄してもらっちゃった!しかも結構あっさり(笑)」等という話を聞かされたら、あなたはどう思いますか?

恐らく、真面目に返済するのがアホらしく思えてきますよね?逆の立場で私がそのような話を聞いたら、すぐに返済をストップすると思います。それはそうです、誰にでも債権放棄をしてくれるのであれば、返済する意味ないですから、話を聞いた時点で支払いを止めます。

こうした理由からも、信用保証協会が簡単に債権放棄に応じるような事が無いのです。

 

債権放棄の基準を満たせば債権放棄に応じて貰う事が可能

信用保証協会は債権放棄の仕組みこそありませんが、債権放棄の基準があります。この基準を全て満たすことで信用保証協会は求償権を債権放棄する事になります。

求償権の放棄に係る基準について(全国統一基準)

信用保証協会が求償権を債権放棄にするには以下の基準を全て満たす必要があります。

(1)求償権元本の放棄を行わなければほぼ確実に経営が破綻すること

(2)経営姿勢等が次の①、②の基準を満たすこと

  • ①債権者に対し必要な情報を開示しており、遊休資産の処分等の自助努力を誠実に行っていること。
  • ②次に掲げる事項のいずれかに該当し,当該中小企業者の事業継続が地域産業全体にとっても利益があると認められること。
    •  一定の雇用効果が認められる等,地域経済の産業活力維持に資する事業であること
    • 地域社会にとって不可欠な事業であること
    • 先進性又は技術力の高い事業であり,今後の発展が見込まれる有望な事業であること

(3)当該中小事業者に係る再生計画等が①から③のすべての事項を満たすこと。

  • ①再生計画等が次の(ア)から(ク)までのすべての事業を充足する適正な内容・手続を踏んで策定されたものと考えられ、かつ各金融機関が再生計画に同意する意思を表明していること。
    • (ア)再生計画等の中で、達成可能と見込まれる事業計画が記載されていること。
    • (イ)再生計画等の中に、実質債務超過解消期間が記載されており、その期間が5年以内であること。ただし、5年超の場合であっても合理的な理由があるものはこの限りでない。
    • (ウ)再生計画等の中に、株主責任等を問うため増減資による割合的地位の減少又は消滅を行う記載があること。ただし、株主責任を問わない場合であっても合理的な理由があるものはこの限りでない。
    • (エ)再生計画等の中に、経営陣の退陣について記載があること。ただし、退陣していない場合であっても、合理的な理由があるものはこの限りではない。
    • (オ)再生計画等の中に、複数の金融機関に対し放棄が求められており、各金融機関に求められている貸付金等の放棄額が合理的かつ公正衡平なものであること。
    • (カ)再生計画等の中に、破産的精算又は法的再生手続によるよりも多い回収が得られる等、経済合理性が期待できる内容が記載されていること。
    • (キ)債権者集会等が実施される場合には招集される等、信用保証協会に適切な意見表明の機会が与えられていること。
    • (ク)再生計画等の作成にあたり、弁護士、公認会計士、税理士等の専門家による財務面、事業面でのデュ-デリジェンスが行われた調査報告書等が存在し、当該報告書について、合理的で実現可能性が高い等の意見が付されていること。
  • ②従業員が再生計画等に協力的であること(労働組合がある場合は、原則として再生計画等につき、労働組合が同意していること)。
  • ③再生計画等の円滑な実施が期待でき、かつ再生計画等の成果(経営損益の黒字転換、債務超過の解消等)が適正な期間内に達成される見通しであること。

出典:日本弁護士連合会 – 事業再生シンポジウム特定調停スキームと経営者保証ガイドラインの運用と実例(P11記載)

一応、このような基準が信用保証協会に用意されてはいるのですが、ご覧いただければ分かる通り、とてつもなくハードルが高いです。このハードルを越える事ができれば、信用保証協会は求償権を放棄する事になります。

債権放棄の要件を満たさなくても、債権放棄に応じるケースがある

前項でご確認頂いた債権放棄の要件を満たさなくても、信用保証協会が求償権を債権放棄に応じる特殊なケースがあります。

全額放棄という話は聞いたことがありませんが、以下のようなケースはよく聞く話です。

  • 時効間際に求償権の5割の金額に対して訴訟を起こされた(残りの5割は実質的な放棄)
  • 時効間際に求償権務の2割程度の金額に対して訴訟を起こされた(残りの8割は実質的な放棄)

信用保証協会の求償権の時効に関する詳しい解説は以下の記事を参考にして下さい。

信用保証協会に代位弁済された求償権の時効は何年?起算点や事例を解説

2013.05.31

また、信用保証協会から「一括で300万円払えるのであれば、残りは請求しない(放棄する)」等といった提案を受けたというお客様も出てきています。

どのような基準でこうした提案をしているのか分かりませんが、このように債権放棄するケースはあるのです。

 

まとめ

以上、信用保証協会の債権放棄について解説しました。

信用保証協会に代位弁済されると、「一生かけて全額返済しなければならないのか?」「破産しない限り負債は消滅しないのかな?」と思われるかもしれませんが、信用保証協会も求償権を放棄をすることがあるのです。

信用保証協会に代位弁済されるとどうなる?今後の流れと返済方法について解説

2013.05.31

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