【銀行融資】リスケジュールのデメリット6つ【失敗しない方法を解説】
銀行融資をリスケジュールしようと考えてますが、デメリットを知りたいです。
失敗したくないので、気を付けることや注意点があれば教えて欲しいです。
本記事では、こういった疑問・要望にお答えします。
- リスケジュールのデメリット6つ
- リスケジュールで失敗しないための注意点6つ
- 失敗しないリスケジュールのやり方
なお、本記事の筆者は、2009年から現在まで中小企業の資金繰り改善コンサルタントとして活動しており、年商数百万の個人事業主から年商10億円以上の企業まで、幅広く対応してきました。
こういった経験を元に、本記事では、銀行融資をリスケジュールするデメリットや失敗しないリスケジュールのやり方をまとめました。
銀行融資をリスケジュールすると元本返済が大幅に減額されるので、資金繰りは楽になりますが、実際に依頼したり、リスケジュールしてみるとデメリットに感じる部分があります。
銀行融資をリスケジュールしようと考えている方は、事前に本記事でデメリットや注意点をチェックしておいてください。
リスケジュールのデメリット6つ
リスケジュールのデメリットは下記6つです。
- リスケジュール中は新規融資が難しくなる
- 手数料/追加保証料がかかる
- リスケジュール実行まで1か月程度かかる
- 経営改善計画書などの書類作成の手間がかかる
- 金利を引き上げられることがある
- 交渉時の経営者の負担が大きい
上記のとおり。
リスケジュール中は新規融資が難しくなる
リスケジュールすると銀行/公的機関からの新規融資は難しくなります。
ただ、新規融資が不可能になるというわけではありません。
下記のようなケースであれば、リスケジュール中でも融資を受けれる可能性があります。
- 受注が確定し、売上の入金で返済が確実視されている場合(商社、卸売業、建設・建築関係に多い)
- 旅館・宿泊業などで、設備投資をしないと売上が減少する可能性が高い場合(ボイラー設備の交換など)
- 手形割引(手形振出人の信用力が高ければ割引いてもらえる可能性が高い)
- リスケジュール中の企業を対象にした保証制度を利用した場合
このように、状況次第ではリスケジュールしても融資を受けることは可能です。
手数料/追加保証料がかかる
リスケジュールすると下記2つの手数料が発生します。
- 条件変更手数料
- 追加保証料(信用保証協会)
上記の順に解説していきます。
条件変更手数料
リスケジュールの契約時、条件変更手数料がかかります。手数料は銀行によって異なりますが、相場は1本あたり3万~5万円ぐらいです。
具体的な金額は担当者に確認しておくといいですよ。
追加保証料(信用保証協会)
信用保証協会の保証付き融資をリスケジュールする場合、保証期間が延長されることから「追加保証料」が発生します。
追加保証料は下記3つの要因で決まります。
- リスケジュール依頼時の借入残高
- 保証料率
- 残りの返済期間
このように、リスケジュールするにもコストがかかるので、借入本数が多い・保証付き融資の残高が多い企業は、リスケジュール契約時に費用が発生することを事前に織り込んでおくといいですよ。
リスケジュール実行まで1か月程度かかる
リスケジュールを依頼してから実行されるまで、だいたい1か月程度かかります。
理由は2つあります
- 本部の稟議で検討されるため
- 返済日に合わせるため
上記の順に解説します。
本部の稟議で検討されるため
リスケジュールは銀行本部の稟議で検討される案件なので、担当者にリスケジュールを依頼してもすぐには決まりません。
担当者が上司にリスケジュールの依頼を受けたことを報告して、報告を受けた上司は本部に稟議申請してそこでリスケジュール承認の可否が決まるので、ある程度時間がかかります。
返済日に合わせるため
リスケジュールは返済日に合わせて実行されます。
例えば、毎月の返済日が25日で、リスケジュールの依頼を19日(6日前)にした場合。
実行されるのは翌月の25日からになる可能性が高いです。
19日に依頼しても、リスケジュールの準備(稟議申請・契約書の準備など)をするのに6日しかありません。
時間が短すぎるので「翌月から実行しましょう」と言われる場合がほとんどです。
複数の銀行と取引していて返済日がバラバラだとさらに時間がかかる
複数の銀行と取引していて返済日がバラバラだと、さらに時間がかかります。
例えば、下記のように3つの銀行と取引していて、26日に「リスケジュールをお願いしたい」と依頼した場合。
- A銀行:毎月5日
- B銀行:毎月25日
- C銀行:毎月月末
A銀行とB銀行はすでに返済済で、C銀行への返済日は1週間以内に到来します。
この状態でリスケジュールを依頼すると、翌々月からの実行になる可能性が高いです。
26日に依頼して、銀行とリスケジュールの条件を調整している間、翌月5日にA銀行の返済が引き落とされます。
A銀行に返済してしまうと、B銀行とC銀行は「今月、A銀行に返済しているのだから、当行も今月分が返済された後にリスケジュールを実行しよう」と考えます。
このように、複数の銀行と取引しているとリスケジュールが実行されるまで、かなり時間がかかります。
経営改善計画書などの書類作成の手間がかかる
リスケジュールを依頼する際、
- 経営改善計画書 → 3~5年分の返済予定表含む
- 資金繰り表 → 3~6か月程度の資金繰り予測
- 借入金一覧表 → 金融機関との取引状況・返済予定の一覧表
などの書類を作成し、提出する必要があります。
資金繰り表や借入金一覧表の作成はそこまで難しいものではありませんが、問題は経営改善計画書です。
経営改善計画書は実現可能性の高いものを求められるので、作成に時間と労力が必要です。
計画書の内容は、
- どのように経営改善していくのか(具体的なアクションプランの策定)
- 計画通り実行すると、どのように数値が改善されるのか(数値目標)
- いつごろ返済可能になるのか
などを盛り込む必要があります。
しかも、経営改善計画書は提出したら終わりというわけではなく、リスケジュール後に計画の進捗状況を報告することになります。
進捗状況が悪いと、不良債権に分類される可能性があるため、実現可能性が高い経営改善計画書を作成する必要があります。
金利を引き上げられることがある
リスケジュールを依頼すると、金利を引き上げられることがあります。
よくあるケースは下記3つです。
- 既存融資の金利を〇%上げさせて欲しい(1度金利を上げてしまうと、約定返済に戻っても金利は上がったままになるので要注意)
- 短期継続融資の金利が上がる
- 手形割引の割引料が上がる
①は断れば済む話ですが、問題は②、③です。状況的に飲まざるを得なくなるので、リスケジュールをきっかけに若干利益率が下がる可能性があります。
交渉時の経営者の負担が大きい
リスケジュールを依頼すると、下記実務が発生します。
- 取引している全ての銀行にリスケジュールを依頼する
- 資金繰り表、借入金一覧表の作成
- 経営改善計画書の作成
- 経営改善計画書の内容を銀行に説明する(全取引行)
- 経営改善計画書に記載している内容を実行する
- 進捗状況を取引行に連絡する
資金繰り表や借入金一覧表は経理に依頼すれば作成してくれると思いますが、経営改善計画の内容は経営者が考えることです。
また、リスケジュール交渉は基本的に経営者が行うことになるので、通常業務に加えてこうした実務的な負担が増えます。
精神的な負担が増えることもある
実務的な負担の他に精神的な負担も増えます。
- 銀行に「返済できない」ことを伝える精神的なストレス
- 第三者に知られないよう、情報を制限するストレス
- 経営改善を行い、会社を立て直さなければならないというプレッシャーによるストレス
リスケジュールによってこうした精神的な負担が増えてしまうことも、リスケジュールのデメリットといえます。
以上がリスケジュールのデメリットです。続いて、リスケジュールで失敗しないための注意点を解説していきます。
リスケジュールで失敗しないための注意点6つ
リスケジュールで失敗しないための注意点は下記6つです。
- 1か月以上余裕をもって依頼する
- リスケジュールすることを恥ずかしいと思わない
- 全ての金融機関を同時にリスケする
- 銀行側の要求を安易に受け入れない
- 試算表と資金繰り表を用意しておく
- 粉飾決算をしていれば正直に伝える
上記のとおり。
1か月以上余裕をもって依頼する
「リスケジュール実行まで1か月程度かかる」という項目でも解説したとおり、リスケジュールを依頼してから実行されるまで、1か月ぐらいかかります。
複数の金融機関と取引していると1か月半~2か月ぐらいかかることもザラにあるので、余裕を持ったスケジュールで依頼するといいですよ
リスケジュールすることを恥ずかしいと思わない
リスケジュールすることを恥ずかしいと思い、ギリギリまで返済を頑張ろうとする方をたまに見かけますが、リスケジュールすることは恥ずかしいことではありません。
借入金の返済が難しくなるのはどんな企業でも起こり得ることなので、恥ずかしい思っても意味ないです。
それに、リスケジュールは「借りたお金は全額返せません。ごめんなさい」という話ではなく、一時的に返済条件を変更して、最終的には全額返済するという話し合いです。
リスケジュール期間中は元本に対する利息を払うのですから、気にしないで大丈夫です。
全ての金融機関を同時にリスケジュールする
リスケジュールの依頼は、全ての金融機関を同時にリスケジュールするのが鉄則です。
例えば、A銀行とは創業時からの長い付き合いだから、A銀行には約定で返済して、付き合いの浅いB銀行の借入はリスケジュール、といったことはできません。
リスケジュールはル一律同条件が基本です。
複数の金融機関と取引していれば、全て同じ条件でリスケジュールする必要があります
不利な要求を安易に受け入れない
リスケジュールを依頼すると銀行から不利な要求をされることがあります。
例えば、
- リスケジュールの期間は3か月にしてほしい
- 金利アップの要求
- 担保の要求
など、会社にとって不利な要求をされることがあります。
この時、「返済できないのが悪いから仕方がない」と考え、銀行の要求を丸呑みしようとする方がいますが安易に返答しないほうがいいです。
特に金利アップは一度上げてしまうと後から下げることは非常に難しいので、断るべきです。
試算表と資金繰り表を用意しておく
銀行にリスケジュールを依頼すると、試算表と資金繰り表を提出するよう求められますので、事前に用意しておきましょう。
ちなみに、試算表と資金繰り表は下記を目安に準備するといいですよ。
- 試算表 → 前月末のものが理想(2か月前でもOK)
- 資金繰り表 → 直近半年の実績と、3か月ぐらい先の資金繰り予定が記載されていればOK
粉飾決算をしていれば正直に伝える
もし、粉飾決算をしているなら、リスケジュールを依頼した時に粉飾の内容 正直に伝えるべきです。
理由は、経営改善計画書を作成する際、財務内容の実態に基づいて経営改善計画を策定することになるので、粉飾した数字を使うと実態とかけ離れてしまい、実現可能性の低いものになります。
経営改善計画書を提出すると、進捗状況を報告することになるので、遅かれ早かれバレます。
ですので、粉飾している場合、経営改善計画を策定する前に銀行に「数字を調整している部分がある」と正直に伝えた方がいいです。
以上がリスケジュールで失敗しないための注意点です。続いて最後に、失敗しないリスケジュールのやり方を解説していきます。
失敗しないリスケジュールのやり方
失敗しないリスケジュールのやり方は下記のとおりです。
- ①2か月前に融資の相談をする
- ②リスケジュールを依頼する
- ③資金調達手段を確保しておく
上記のとおり。
①2か月前に融資の相談をする
リスケジュールを実行して欲しい月の2ヶ月ぐらい前に、融資の相談をしましょう。
なぜ、融資の相談をするのかというと、新規融資の可能性を確認するためです。
融資の相談をして、新規融資の可能性があればそのまま話を進めればいいですし、難しいと言われたらこれ以上の借入は非常に難しいので、ここでリスケジュールすることを決断します。
②リスケジュールを依頼する
これ以上の新規融資は難しいことを確認したら、リスケジュールを依頼します。
2か月ぐらい前に連絡していれば、時間と資金に余裕を持った状態でリスケジュールの交渉・手続きを進められます。
「リスケジュール実行まで1か月程度かかる」という項目でも解説したとおり、リスケジュールは実行まで1か月近くかかるので、早めに依頼することで手元資金を確保できます。
③資金調達手段を確保しておく
リスケジュールを依頼すると同時に、資金調達手段も確保しておきましょう。
リスケジュール期間中は新規融資は難しくなりますし、リスケジュール期間終了後(約定返済に戻った時)、返済実績を作らないと新規融資は難しいので、資金調達手段を確保しておく必要があります。
ちなみに、リスケジュール中の資金調達方法は下記5つあります。
- ビジネスローン
- ABL(売掛金担保融資・動産担保融資)
- トランザクションレンディング
- 不動産担保ローン
- ファクタリング
特にビジネスローンは審査も早く、財務内容がそこまで悪くなければリスケジュール中でも融資を受けれるので、リスケジュールの申し込みと同時期にビジネスローンに申し込んでおくと、いざという時に安心です。
実際に借りなくても、申し込んでおくだけでも安心ですよ。
ちなみに、ABLは審査に1か月ぐらいかかるので、こちらも使う使わないは別として、申し込みだけ済ませておくと安心ですよ。
まとめ
以上、銀行融資をリスケジュールするデメリットと失敗しないリスケジュールのやり方を解説しました。
リスケジュールは依頼してから実際に実行されるまで時間がかかるので、時間と手元資金に余裕をもって依頼するといいですよ。