リスケ依頼時のメインバンクの判断方法【複数行と取引している時の対処法】
毎月の返済が厳しいのでメインバンクにリスケ依頼しようと思ってます。
複数行と取引していて、どこがメインバンクなのか分かりません。
メインバンクの判断方法を教えてください。
本記事では、こういった疑問・要望にお答えします。
- リスケ依頼時のメインバンクの判断方法3つ
- 複数行にリスケ依頼する時のポイント2つ
- 複数行にリスケ依頼する時のよくある質問
なお、本記事の筆者は、2009年から現在まで中小企業の資金繰り改善コンサルタントとして活動しており、年商数百万の個人事業主から年商10億円以上の企業まで、幅広く対応してきました。
こういった経験を元に、本記事では、リスケ依頼時のメインバンクの決め方をまとめました。
まず基本的な前提として、
メインバンクの判断方法は融資残高ベースで決められますので、現時点で融資残高が最も多い銀行がメインバンクになります。
しかし、これはあくまで約定返済中における考え方であり、リスケ依頼時は状況が微妙に異なります。
融資残高が最も多い銀行がメインバンクだと思い、リスケ依頼すると「当行はメインではありません、〇銀行さんがメインだと思います」と言われて、他行から依頼するよう促されることがあります。
本記事では、リスケ依頼時におけるメイバンクの判断方法を紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
リスケ依頼時のメインバンクの判断方法3つ
リスケ依頼時のメインバンクの判断方法は下記3つあります。
- 融資残高で決める方法
- 毎月の返済額で決める方法
- 借入の保全状況で決める方法
上記のとおり。
融資残高で決める方法
まずは基本となる、融資残高で決める方法です。
例えば、下記3つの銀行と取引している場合。
- A銀行の残高:1億円
- B銀行の残高:2,000万円
- C銀行の残高:800万円
かなり分かりやすい例だと思いますが、この場合、融資残高が最も多いA銀行がメインバンクです。
もし、現在取引している銀行の融資残高が上記のような状況であれば、融資団高が多い順にリスケ依頼の連絡をしていけばOKです。
毎月の約定返済額で決める方法
2つ目は、約定返済額で決める方法です。
例えば、下記のように2つ以上の銀行と取引していて、融資残高がほとんど変わらない場合。
金融機関 | 融資残高 | 毎月の返済額 |
---|---|---|
A銀行 | 5,000万円 | 130万円 |
B銀行 | 5,000万円 | 80万円 |
このようなケースでは、毎月の約定返済額でメインバンクを判断します。
このケースで言えば、A銀行の方が毎月の返済額が多いため、A銀行がメインバンクになります。
金融機関 | 融資残高 | 毎月の返済額 |
---|---|---|
A銀行 メインバンク | 5,000万円 | 130万円 |
B銀行 サブバンク | 5,000万円 | 80万円 |
保全状況で決める方法
3つ目は借入の保全状況で決める方法です。
例えば、前項「毎月の約定返済額で決める方法」のように2つ以上の銀行と取引していて、融資残高がほとんど変わらなければ、基本的には毎月の約定返済額で判断します。
金融機関 | 融資残高 | 毎月の返済額 |
---|---|---|
A銀行 メインバンク | 5,000万円 | 130万円 |
B銀行 サブバンク | 5,000万円 | 80万円 |
しかし、保全状況が異なると下表のように逆転現象が起こります。
金融機関 | 融資残高 | 毎月の返済額 | 保全状況 |
---|---|---|---|
A銀行 サブバンク | 5,000万円 | 130万円 | 全額保証付 |
B銀行 メインバンク | 5,000万円 | 80万円 | 3,000万円は保証付 [2,000万円はプロパー] |
毎月の返済額だけ見ればA銀行がメインバンクと判断してしまうかもしれませんが、A銀行の借入は全て信用保証協会の保証付融資です。
保証付融資なので、最悪、融資金が回収不能(債務不履行)に陥っても、A銀行は信用保証協会から代位弁済を受けれるので、リスクはほとんどありません。
代位弁済の言葉の意味は、別記事の「信用保証協会に代位弁済されるとどうなる?【徹底解説】」をどうぞ。
一方、B銀行の毎月の返済額はA銀行より少ないものの、5,000万円の融資残高のうち、2,000万円はプロパーです。
最悪、融資金が回収不能(債務不履行)に陥った場合、3,000万円は代位弁済で補填されるものの、2,000万円は回収不能となってしまいます。つまり、B銀行はA銀行よりもリスク負担度が高いと判断できます。
融資残高が均衡するようなケースは少ないので、融資残高で決める方法が一般的ですが、もしこういった状況になったら、毎月の返済額や借入の保全状況でメインバンクを判断するといいですよ。
以上がリスケ依頼時のメインバンクの判断方法となります。続いて、複数行にリスケ依頼する時のポイントを紹介していきます。
複数行にリスケ依頼する時のポイント2つ
複数行にリスケ依頼する時のポイントは下記2つです。
- 借入金一覧表を作成する
- 同じ条件でリスケ依頼する
上記のとおり。
借入金一覧表を作成する
借入先が1行であれば必要ありませんが、2行以上の金融機関と取引している場合、借入金一覧表を作成しておくといいですよ。
借入金一覧表を作成し、下記内容を一覧表にまとめておくことで、融資残高や毎月の返済額、保全状況が一目で分かるので、メインバンクを判断しやすくなります。
- 当初借入額
- 借入日・借入期日・借入期間、毎月の返済日、借入金利
- 返済条件(元金均等分割・期日一括返済など)
- 現在の融資残高
- 資金使途(運転資金・設備投資資金など)
- 担保の有無(信用保証協会、不動産担保など)
複数の銀行から融資を受けている場合、資金繰り表と経営改善計画書とあわせて作成しておくといいですよ。
なお、作り方が分からない方向けに、筆者が実務で使っている借入金一覧表の書式を下記記事で配布していますので、必要な方はぜひチェックしてみてください。
同じ条件でリスケ依頼する
メインバンクが分かったら、メインバンクから順にリスケ依頼していくことになりますが、リスケ依頼の内容は取引行一律同条件で依頼してください。
- 返済条件(元本ゼロ/1万円/シェア割り)
- リスケスタート時期(当月/翌月など)
など、取引している銀行/公的機関、一律同条件で依頼するのが基本です。
リスケのスタート時期には要注意
複数行と取引している場合、リスケのスタート時期には注意してください。
翌月以降からであれば問題ないですが、当月に依頼する場合、返済日が到来して引き落としがかかっていると、当月からのリスケは応諾してもらえない場合がほとんどです。
例えば、3月10日に、当月(3月)スタートでリスケ依頼する場合。
金融機関名 | 返済日 | 約定返済額 | 返済の状態 |
---|---|---|---|
日本公庫 | 5日 | 50万円 | 返済済 |
A銀行 | 10日 | 200万円 | 返済済 |
B銀行 | 25日 | 30万円 | 未返済(これから) |
C銀行 | 月末 | 100万円 | 未返済(これから) |
日本公庫とA銀行はすでに引き落としがかかっている状態で、「当月からリスケして欲しい」とい依頼しても、特に問題なく受け付けてもらえると思います。
問題はB銀行とC銀行です。
B銀行とC銀行に「当月からリスケして欲しい」と依頼すると、当月からのリスケは拒否され、翌月以降であればOKと回答されます。
理由は、B銀行とC銀行からすると、「当月、日本公庫とA銀行に返済しているのに、なぜ当行には返済しないのか?」となってしまうからです。
銀行は返済を月単位で見ているので、返済状況にバラつきがあると「他行と同じ条件ではない」と判断され、リスケを拒否されます。
リスケは他行一律同条件が基本なので、返済条件はもちろん、リスケスタート時期も合わせるようにしましょう。
以上が複数行にリスケ依頼する時のポイントとなります。続いて最後に、複数行にリスケ依頼する時のよくある質問とその答えを解説していきます。
複数行にリスケ依頼する時のよくある質問
複数行にリスケ依頼する時のよくある質問とその答えは下記のとおりです。
- 長期借入だけリスケ依頼することはできますか?
- 残債/返済回数が少ないものを返済してからリスケ依頼できますか?
上記のとおり。
長期借入だけリスケ依頼することはできますか?
結論から言うと、できません。長期・短期含めてリスケ依頼することが前提となります。
引当融資であっても、引当融資を含めたうえでのリスケ依頼となりますので、どうしても短期を返済したいということであれば、短期融資の返済日まで長期借入の返済を続けるほかありません。
残債/返済回数が少ない借入を一括返済して残債が多い借入だけリスケ依頼できますか?
- あと3~4回で返済が終わる
- 残債が残りわずか(50万~100万)
こういった状況にある方から、よく「残債/返済回数が少ないから、リスケ依頼する前に一括返済して終わらせたい」とったご質問を受けることがありますが、基本的にやめた方がいいです。
他行の立場からすると、「偏波弁済(へんぱべんさい)」と捉えられかねないので、残債/返済回数が少ない借り入れでも、同じようにリスケ依頼すべきです。
まとめ
以上、リスケ依頼時のメインバンクの判断方法を解説しました。
基本的に、メインバンクの判断方法は融資残高ベースで決まりますので、現時点で融資残高が最も多い銀行がメインバンクです。
しかし、複数行と取引していて残高も同じぐらいだと、どこがメインバンクなのか判断できない場合が出てきますので、もしそうなったら本記事を参考に判断してください。