銀行融資のリスケが最良の選択とは限らない【出口戦略が無ければ資金流出するだけ】

銀行から「これ以上の融資は難しい」と言われたからリスケジュールを検討しているけど、資金繰りは厳しいとはいえ、金利ぐらいならなんとか払っていけそうだから、すぐにリスケジュールした方が良いですよね。

リスケジュールした後にもし、資金繰りが改善されなければどうすれば良いの?

この記事では、こういった疑問にお答えします。

目次

銀行融資の元本返済が難しければリスケジュールは有効

半年、あるいは1年間リスケジュール(元本返済猶予)することで、資金繰りが改善される見込みがあり、リスケジュール終了後、約定弁済に戻っても継続して返済できる見込みが高ければ、リスケジュールする事は良い選択です。

いきなり約定弁済に戻るのは難しいけど、約定の3分の1、あるいは半額ぐらいは返済できそうだ。という事でも問題ありません。

一定期間、元本返済を猶予してもらうことで、経営継続が実現でき、今後、元本返済の見込みがあるという事であれば、リスケジュールは有効であるといえます。

しかし、リスケジュール後の見込みが立たない場合、リスケジュールをする事が必ずしも有効とは言えませんので、注意が必要です。

リスケジュールすると新規融資は難しくなる

リスケジュールすると元本返済が猶予されるので、資金繰りが改善されるというメリットがある一方、
信用格付けが下がり、新規融資が難しくなるというデメリットがあります。

とはいえ、全く借りれなくなる訳では無いということではありません。

「【【リスケせず返済を続けてはいけない理由】融資謝絶ならリスケすべき」という記事でも解説しているとおり、
リスケジュール中でも融資を受ける事ができる保証制度や、ノンバンクでの資金調達など、選択肢はいくつかあります。

リスケジュールは更新する度に苦しくなっていく

リスケジュールで元本返済が猶予されれば、新規融資を受けた時と同じよう効果を得られますので、約定どおり返済するのが難しい企業は、リスケジュールして資金ショート・倒産を回避した方がメリットは大きいです。

このように、一見するとリスケジュールという選択が合理的な判断に思えるかもしれません。

しかし、経営改善が思うように進まず、売上が徐々に減るようになると、元本は一向に減らず、金利を払い続ける事になってしまいます。

これが半年~1年程度のことであれば、あまり気にならないと思いますが、リスケジュールを2年、3年と更新するようになると、以下の支払負担が重荷に感じるようになってきます。

  • 毎月発生する金利支払い
  • 毎年発生する信用保証協会の保証料
  • リスケジュールの手続き費用

実際、3年~5年近くリスケジュールしているお客様からお話を聞くと、殆どの方が「金利だけ払い続けても元本が全く減らない。このままリスケジュールを続けても資金繰りは苦しくなる一方」と答えます。

殆どの方がリスケジュールを継続する

こうしたお話が出る度に、筆者は「元本返済の見込みが立たないのであれば、いっそのこと返済を止めて代位弁済させた方が楽ですよ」とお伝えするのですが、実行する方は非常に少ないです。

代位弁済の詳細は別記事の「【保存版】信用保証協会に代位弁済されるとどうなる?【徹底解説】」をどうぞ。

金利ストップの選択をする人は極めて少ない

実際どれぐらい少ないのかといいますと、資金繰りの状態にもよりますが、だいたい100人相談に来られたら、実際に実行する方は一桁ぐらいしかいません。

残りの方は、「とりあえず再度リスケジュールして様子を見よう」という選択をします。

銀行融資をリスケジュールして金利を払い続けても根本的な解決にはならない

具体的な出口戦略をもたず、惰性でリスケジュールを更新し続け、延々と利息を払い続けても根本的な解決にはなりません。

リスケジュールの出口戦略を考えなければ、無駄に資金を流出させるだけです。

リスケジュールを何度も更新している方によくあるケース【実例】

「リスケジュール中だけどなんとか資金調達できないか?」というご相談を受けることが良くあるのですが、よくあるのが次のようなケースです。

  • Aさん
    • 毎月80万円の金利を3年半近く支払い続けている
    • リスケ中に払った金利の総額:80万 × 42か月 = 3,360万円
  • Bさん
    • 毎月120万円の金利を4年間支払い続けている
    • リスケ中に払った金利の総額:120万 × 48か月 = 5,760万円

こういった状況にある方から、「1,000万ぐらいまとまった資金を調達できる方法はないか?」というご相談をよく受けます。

数字を見れば分かると思いますが、金利支払いを止めてしまえば借りる必要は全く無く、支払を止めるだけで資金繰りは大幅に改善されるという事が容易に想像つきます。

支払を止めれば楽になるのは理解していても、支払いを止められない・あるいは止めにくいのには理由があります。

殆どの方がこの理由で支払ストップを躊躇して、惰性で金利を払い続けることになるのです。

銀行融資の金利支払いストップに踏み切れない心理的な理由5つ

銀行融資の金利支払いストップに踏み切れない心理的な理由は下記5つです。

  • 銀行融資が絶望的になるから
  • 手形取引が不可能になるから
  • クレジットカードが使えなくなるから
  • 担保物件が競売になるから
  • 支払いを止めた後の事が想像つかないから(怖い)

上記のとおりです。

銀行融資が絶望的になるから

金利の支払いを90日間止めてしまうと期限の利益喪失となり、金融事故扱いになります。

金融事故扱いになれば、銀行取引停止処分となり銀行融資は絶望的になります。

保証付融資は代位弁済となり、今後は信用保証協会に求償債務を返済することになります。

保証付融資の代位弁済の詳細については以下の記事をどうぞ。

手形取引が不可能になるから

金融事故扱いになると銀行取引停止処分となり、手形は使えなくなります。

手形帳はそのまま持っていてもOKですが、新規の手形帳は発行して貰えなくなります。

手形の流通量は減少傾向にあるとはいえ、「原則、手形しか受け付けない」という企業もまだまだありますので、そのような取引先と取引していて、しかも売上の大部分を占めているような場合、大きな痛手となります。

クレジットカードが使えなくなるから

期限の利益喪失をきっかけに、クレジットカードが止まる場合があります。

ただし、全てのカードが止まる訳では無く、止まらないカードもあります。

担保物件が競売になるから

90日間金利の支払いを止めてしまうと、期限の利益喪失となり、担保物件は競売にかけられてしまいますので、不動産の保全を図らないと所有権を失う事になります。

ただ、任意売却の交渉も可能ですし、買受先やスポンサーを探す時間もある程度は考慮してくれますので、期限の利益喪失となった時点でいきなり「立ち退け」と言われるような事はありません。

あわせて読みたい
【競売回避】抵当に入っている不動産の保全を図る任意売却について解説【基礎知識】 不動産(事業所・工場等)を担保に入れて融資を受けたけど、資金繰りが厳しいから今後の返済が難しくなりそうだよ。返済ができなくなると競売にかけられると思うけど、...

支払いを止めた後の事が想像つかないから(怖い)

意外と多いのが先の見えない恐怖に駆られ、現状維持を選択するケースです。

筆者がどんなに先の事を説明しても、

  • 「こうなったらどうなる?自分だけでは対応できないのではないか?」
  • 「取引先や地元に知れ渡り、事業どころか生活が脅かされるのでは?」

などと被害妄想を膨らませ、結局、現状維持を選択してしまうケースが少なくないのです。

銀行融資のリスケジュール更新を惰性で続けるなら戦略的に止めるという判断も必要

リスケジュールを惰性で何年も更新し続け、毎年何百万も流出させてしまうのであれば、その資金を内部留保する事で、多くの問題を解決する事ができるようになります。

資金調達の必要がなくなるので銀行融資は不要になりますし、手形取引は「手形を振り出す事はできないですが、前金・保証金を差し入れるので、掛で取引して欲しい」などと持ち掛けて、取引を継続できる可能性もあります。

「クレジットカードが使えなくなる」という心配も、手元資金があればそこまで大きな問題にならないと思います。

カードが使えなくなると、「社員の経費精算、Webサービスの支払いや、ガソリン、高速道路の料金の割引が受けれなくなるから不便」とおっしゃる方もいますが、金利支払いを止めて代位弁済になっても使えるカードはあります。

また、万が一カードが止まっても、デビットカードなら普通に作れますし、ETCカードも作れますので大きな痛手はありません。

また、支払を止めて内部留保を蓄えることで、不動産の任意売却の成功可能性が高まります。

  1. 新会社を設立して、
  2. 新会社でファイナンスして、
  3. 新会社で不動産を買い受ける

という事も現実味を帯びてきます。

不動産の任意売却は色々と費用がかかりますので、資金的な余裕が無いと任意売却の成功可能性は低くならざるを得ません。

でも、金利の支払を止めてしまえば内部留保できますので、留保した資金で成功する可能性は飛躍的に上がります。

支払を止めた後のことが想像つかないというのは「慣れるかどうか」の問題ですので、いったん止めてしまえば殆どの方がその状況に慣れます。

なので、大きな問題にはなりません。

惰性でリスケジュールを更新し続け、無策で金利を払い続けるのであれば、出口戦略を考えて、「支払いを止める」という判断も必要になります。

ちなみに、銀行融資の返済を止めたらどうなるのか心配の方は、「【必見】銀行融資が返済できないとどうなる?【まるっとわかる】」をどうぞ。

また、金利を止めた後の具体的な選択肢を知りたい方は、「信用保証協会に代位弁済された企業に生き残りの選択肢はある?【3つあります】」をどうぞ。

まとめ

以上、銀行融資のリスケジュールは有効かどうか、という事について解説しました。

「直近数ヶ月は元本の返済が難しいけど、その後は元本返済の見通しが立っている」という事であれば、リスケジュールは有効です。

しかし「とりあえず先の見通しも立たないし、銀行から新規融資を断られたからリスケジュールした」という事であれば、今後、戦略的に支払いを止めるという判断も必要です。

人気記事 法人向けビジネスローンおすすめ6選【即日・低金利で資金調達】

人気記事 【最短即日】法人向けファクタリング6選【オンライン完結で資金調達】

面白かったらシェアをお願いします!
  • URLをコピーしました!
目次