債務者口座、裁判所が特定 民事執行法改正へ【日経新聞】

今後、債務者に対する差押えのハードルが下がりそうです。


債務者口座、裁判所が特定 民事執行法改正へ

養育費や賠償金、不払い防止

法務省は12日、民事裁判の支払い義務を果たさない債務者の預金口座情報を、裁判所が銀行などに照会できる制度の検討を始めた。

離婚時に取り決めた養育費や判決が命じた賠償金が支払われない場合、銀行口座を差し押さえる「強制執行」により回収しやすくする。

参考リンク 2016/9/13 日本経済新聞[電子版]

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銀行口座を押さえる場合、相手の口座情報が必要

債権回収を図る際、債務者の預金口座を差し押えようと思ったら、相手の金融機関、支店名の特定が必要です(口座番号はいらないです)。

でも、銀行口座って、取引で使用している振込先しか分からない事が殆どです。

そこで、相手の口座を差し押さえるために、

  1. 弁護士照会をかけてもらう
  2. 探偵等に調査を依頼

といった方法で相手の銀行口座を特定する必要があります。

上記の他、相手の事務所に訪問して、取引銀行の痕跡が無いか目視で確認しに行く(銀行から貰ったと思われるカレンダー、ボールペン・メモ帳等が置いてないか)という方法も一応あります。

しかし、ノベルティを目につくところに置いておかない方もいるので、調べに行っても不発に終わってしまうケースも当然出てきます。なので、1か2の方法で調べる事になる場合が殆どです。

弁護士照会をかけても口座が判明しないこともある

弁護士照会をかければ口座は確実に特定できると思われるかもしれませんが、弁護士照会をしたからといって、必ずしも相手の銀行口座が判明するという事ではありません。

銀行によっては弁護士照会をかけても「お客様に対する守秘義務の観点から、原則として、本照会に対して回答することはできない」等というNG回答をしてくる銀行もあります。全ての銀行が弁護士照会にすんなり応じる訳ではありません。

探偵などに調査を依頼しても分からない事がある

探偵に頼んだからといって、確実に結果が分かるかというと、一概にそうとも言い切れません。口座情報が特定できない事もあります。

そうなると、他に調べる方法が無いので、差し押えはもうできないのか…。と諦めムードになるかもしれませんが、一応、他に方法があります。

 

口座を特定できない時の奥の手(絨毯爆撃)

債務者の口座が特定できない時の手段として、絨毯爆撃をしかけるという方法があります。これは、会社の近隣にある金融機関に全て差押えをかけるという荒業です。荒業というよりは、雑な方法と言った方が早そうですね…。要は「数打ちゃ当たる戦法」です。

ただ、絨毯爆撃は「差押え金額が分散してしまう」というデメリットがあるので、あまり良い方法とは言えません。

例えば、債権額が1,000万円あり、絨毯爆撃で差押えをしようと思ったら、下記のように差押え額を分散させる必要があります。

A銀行 200万円
B銀行 200万円
C銀行 200万円
D銀行 200万円
E銀行 200万円

仮に、債務者が保有しているA銀行の口座に500万円の預金があり、運よく差押えができたとしても、回収できる金額は200万円しか押さえる事はできず、残りの300万円は債務者が自由に使う事ができます。

A銀行に対する差押えは200万円が上限ですので、それ以上の預金があった場合、差押えの効力は及びません。A銀行の口座にある300万円を回収しようと思ったら、再度差押えの手続きを行わない限り、回収する事はできないのです。

預金を引き出されたら終わり

預金なんて引き出されたら終わりですから、2回やっても全く意味がありません。ここまでお読み頂いた方は、「債権回収が如何に大変か」という事を分かっていただけたのではないか思います。

こうした労力を考えると、今回の民事執行法改正は非常に画期的といえます。裁判所が情報開示を要請すれば、無視される事はないと思いますので、口座情報調査の手間が省略される可能性があります。

調査の手間が省略されれば債権回収の迅速化が図れますので、未回収による泣き寝入りが大幅に減るかもしれませんね。

余談ではあるのですが、差押えされる側である債務者からみたら、かなり厳しいですよね…。 つい最近、取引先から仮差押されてしまったというお客様から相談を受けている手前、ちょっと複雑な気持ちがあります。

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ABOUTこの記事をかいた人

1977年神奈川県生まれ。コンサルティング会社勤務を経て独立。店舗ビジネスに特化したコンサルティング業務を展開していたが、身近な人の倒産を目の当たりにした事をきっかけに事業再生に目覚め、平成21年5月より、事業再生に参入。全国各地の中小企業の再生業務に関与し、中小企業の事業再生のサポートを行っている。 平成23年8月、M&Aに特化した株式会社クレアークを設立、代表取締役に就任。現在に至る。業務の幅を広げる事により、サポートの幅を広げている