負債の金額が少ないと、債権カットの交渉が難しいという「債権放棄のパラドックス」

負債の問題を解決する上で、覚えておいていただきたい事があります。それは、負債の金額が少ないと、債権カットの交渉が非常に難しくなるという逆説です。

負債額が少なければ少ないほど、債権カットの交渉は非常に難しく、負債額が大きければ大きいほど、債権カットの交渉は簡単になるのです。

なぜ、このような事が起こりうるのでしょうか。

例えば、ある出来事をきっかけに、数億円の負債を抱えてしまったとします。数億円の借金なんて、一生かかっても返せません。電卓で計算してみたら、完済するのに、○百年かかるとの計算結果が出てきました。このような状況になったら、あなたはどのように考えますか?

恐らく、「返すのが面倒だから、破産しよう」「どうせ返せないし、アホらしいから放置しよう。借金にもどうせ時効があるし。」いずれかを選択するのではないでしょうか。私もそう思います。そもそも、悩むのもアホらしくなる金額です。

債権者は、債務者に開き直られたら回収不能になる

債務者にこのように思われてしまったら、もう1円たりとも回収できないわけです。返す意味が無くなる訳ですから、どんなに「返せ」と債権者が言っても、債務者の耳に届くはずがありません。どんなに督促状を送ろうが、毎日のように訪問したところで、「この状態で返したところで、ドブに金を捨てているのと同じだな」と気付かれてしまったら、もはや回収しようがありません。

こうなってしまうと、債権者としても債権回収など到底できないですから、現実的に払える金額まで譲歩するほか回収の手立てが無くなってしまうワケなのです。

1万円でも多く回収するためにひたすら譲歩してくる

現実的に払える金額まで譲歩する具体例として、次のようなやり取りが想定できます。

毎月の返済原資がどう頑張ってもいいとこ10万円という方に、「5億円の負債について、今後の具体的な返済方法を提案して欲しい」等と言うよりも、「毎月10万円を5年間返済してくれれば、残りの部分については放棄します。」と言った方が回収しやすいと言えます。

債権者は回収の権利を持ってはいるが…

債権者は債務者に対し、5億円請求できる権利を持っている訳ですが、回収できなければ5億円の債権もただのゴミです。債権は回収してなんぼの世界ですから、いくら多額の請求権を有しているからといっても、回収できなければ何の意味もありません。

そのため、回収できるうちに1万円でも多く回収した方が、債権者としても得するわけです。

 

負債が少ないと債権カットの交渉は難しい

しかし、負債が少ないと債権カットの交渉は非常に難しいものとなります。なぜなら、負債が300万とか500万ぐらいの金額だと、債権者は債権カットにはなかなか応じようとしないからです。

負債が少ないと債権者が債権カットに応じない理由

負債総額が300~500万ぐらいのものであれば、「支払いは厳しいけど、切り詰めれば数万円のお金は残る。破産するとブラックリストに載ってクレジットカードが使えなくなるし、住宅ローンも組めなくなるから、これぐらいで破産するのはちょと…」 と考える方が少なくありません。

経営者の方ならなおさらだと思います。「300~500万ぐらいならなんとかなりそうだ」と思うのではないでしょうか。当然、債権者もこのような心理状況を突いてくるワケです。

負債が少ないと、開き直るのが難しい

債務者がいくら「資金繰りが厳しいから返済する金が無い、好きにしてくれ」と開き直ったとしても、債権者としては、「破産する気があるならさっさとしてみろ!どうせ口ばかりで破産する気なんてあるはずが無い」と考える訳です。

こうなると非常にしつこく催促してきたり、訴訟を起こして債務者に精神的な揺さぶりをかけてきたりします。このように、負債額が少なければ少ないほど、債権カットの交渉は非常に難しくなるのです。

 

まとめ

負債総額が少ないと債権カットに応じてくれやすいようなイメージをお持ちの方が少なくありませんが、実際は全くの逆で、負債が少なければ少ないほど債権カットの交渉は難しく、負債が多ければ多い程、債権カットの交渉は簡単になるのです。

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ABOUTこの記事をかいた人

1977年神奈川県生まれ。コンサルティング会社勤務を経て独立。店舗ビジネスに特化したコンサルティング業務を展開していたが、身近な人の倒産を目の当たりにした事をきっかけに事業再生に目覚め、平成21年5月より、事業再生に参入。全国各地の中小企業の再生業務に関与し、中小企業の事業再生のサポートを行っている。 平成23年8月、M&Aに特化した株式会社クレアークを設立、代表取締役に就任。現在に至る。業務の幅を広げる事により、サポートの幅を広げている