弊社にご連絡下さる経営者様の多くは、取引銀行から「これ以上の追加融資は難しいです」と言われた方が少なくありません。そしてそのような方々の多くは、「銀行融資以外の資金調達」を模索する事が多いです。
手元資金が枯渇してしまえば事業継続ができなくなりますから、あなたが資金調達を模索するのは、経営者であれば当然だと思います。
でも、私はこのような話を聞く度に、いつも違和感を感じてしまいます。資金繰りが苦しいから、資金調達をしようと考える方に対しての違和感、いったい、何だと思いますか?
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資金調達ができれば立ち直ると思っている方が多い
それは、「資金調達ができれば、会社は立ち直る」と思い込んでいる方が非常に多いという事です。
- とりあえず資金さえあればなんとかなる
- 今をしのげばなんとかなるから、少しぐらい金利が高くても仕方がない
このように考えている経営者の方が、意外と多いのです。
これについては、気持ちは分からなくもありません。誰だって、ギリギリの資金繰り状況に追い込まれてしまえば「お金さえあれば」と考えるのは当たり前ですよね。考えない方がおかしいです。あなたがそのように考えるのはすごく分かります。
確かにお金さえあれば今の状況を打破する事はできると思います。その事に関しては、異論はありません。
ただ、資金調達ができれば瞬間的に資金繰りは改善されるでしょうが、それはあくまで一時的なものであり、今月はなんとかなったとしても、数ヶ月経ってしまえば、また、すぐに苦しくなります。しかも、殆どの場合で今よりもさらに苦しくなるという状況を招いてしまう事になるのです。
資金調達により、さらなる資金繰り悪化を招きかねない
なぜ、今よりもさらに苦しくなってしまうのかというと、資金調達をする前から苦しい訳ですから、新たに資金調達してしまえば、その調達したお金の返済分が今の返済分に重くのしかかってきますから、その分苦しくなってしまうのです。
ただ、これを言うと、「借りるなと言っているのですか?」と聞かれますが、そういう事ではありません。
カツカツで資金繰りを回しても苦しいだけですから、資金調達ができるなら調達した方が良いと私は思います。何が言いたいのかといいますと、「借り入れよりも先に考えなければいけない大事な事がある!」ということを言いたいのです。
資金繰りが苦しくなるには、何かしら原因がある
そもそも、資金繰りが苦しいというのは、何かしらの原因があって苦しくなる訳です。業績が好調であれば「資金繰りが苦しい」なんて口にすることは無いのですから(黒字倒産する会社もありますけど、その事はいったん忘れて下さいね)。
資金繰りが苦しくなる原因、それは、
- 債務超過 (過大な債務負担)
- 業績不振 (事業が赤字で資金を垂れ流す)
- 高利の借入(金利払いが大きく、経常利益を食いつぶす)
といった原因が主なものです。
この問題を改善しようとも考えずに「とりあえず資金調達しよう」と資金調達を行っても、抜本的な解決にはなりません。借りてもまたすぐに苦しくなるのは目に見えています。
経営改善しない限り、資金は垂れ流しになる
資金調達に頼りきってしまう経営者の方は、資金管理が杜撰で、財務活動をおろそかにしている場合がほ少なくありません。「とりあえず資金調達をしよう」と考える前に少しだけ意識を変え、問題解決に向けて早急に着手しなければならないのです。
「とりあえず資金調達をしよう」と考えてしまう経営者の多くは「とにかく、借りてしまえばなんとかなる」という考え方が頭の中を支配しているため、私がいくら、経営改善の取り組みを切に訴えても、なかなか聞き入れてもらえない事があります。
今抱えている問題を解決しないうちに資金調達しても、業務改革を断行して、経営改善を図らなければ、無駄なお金を垂れ流してしまうだけです。
資金繰りに窮してしまうと、経営改善という最も大事なことから目を背け、安易に資金調達に走ってしまう経営者がとても多いのです。

経営者が考えなければならないのは「会社を良くしていく」こと
そもそも、経営者の考えなければならない事って、資金調達の事だけでしょうか?
「これから会社をよくしていくにはどうしたら良いのか?」という事を考えるのが、経営者の仕事なのではないでしょうか?
もちろん資金調達は経営者の仕事のひとつではある事は否定しません。
でも、経営者の仕事が「資金調達」に走ってしまうと、手っ取り早く調達できる方法ばかりに目が行ってしまい、あまり良い結果を生み出す事はとても少ないです。
とりあえず、多少金利が高くても金が引っ張れるならと借りてしまったり、「少しぐらいなら…」と粉飾に手を染めてみたり、「昔あいつを助けてやったから、保証人になってもらおう」と、大仰な芝居をして、連帯保証させ、お金を借りてみたり…。正直、あまり良い結果にならない事が多いです。
縁故者からの直接金融を考えるケースも増えてはきましたが…。
ただ、最近は、このような微妙な調達方法から
- ファンドで資金調達できないか?
- 少人数私募債で資金調達はできないか?
等といった資金調達方法を検討する方も増えてきました。
でも、これらの資金調達を考える場合は、まず、業務改革を断行し、問題解決を図った上での資金調達になります。現状のままで、資金調達を図ろうとしても、投資家や関係者の協力を得る事はできません。
ましてや、少人数私募債など、縁故者の方に限られる訳ですから、これらの方からお金を集めて返せなくなった場合、金融機関に借りたお金を返せなくなった時よりもやっかいです。
縁故者から調達した資金で下手を打つと、恨みを買う可能性も
金融機関から借り入れたお金は、ビジネスで借りたお金ですから、最悪、返す事ができなくなったとしても、あなたの今後の人生に影響を及ぼす事は少ないと思いますが、少人数私募債で集めたお金で下手を打ってしまえば、一生、縁故者の恨みを買ってしまう事になります。
そのため、このような資金調達を考える前に、まずは現状の問題を解決する事が先決なのです。資金調達をするのも大事な事ですが、本質的な優先順位を見誤らないように、十分気をつけて下さいね。

資金調達を考える前に、経営改善を考え抜く
経営改善と資金調達を同時進行で行う事が理想ですが、まずは、「どうしたらうまく資金調達できるのか?」という事を考える前に、
- どうしたら支払い負担が減るのか?
- どうしたら落ち込んだ売上を回復する事ができるのか?
- どうしたら黒字化する事ができるのか?
- どうしたら組織を活性化できるのか?
- どうしたら、今の会社を立て直すことができるのか・・
という事を考えて下さい。
資金調達を考える前に、経営改善の着手!とても大事な事ですから、覚えておいて下さいね。