- 民法改正で債権譲渡禁止特約が無くなるみたいだけど、ABLやファクタリングが使いやすくなるのかな?
- 大企業との契約書に債権譲渡禁止特約が入っているけど、売掛を担保に資金調達できるようになるのかな?
- 今後、ABLやファクタリングを利用するかもしれないので詳しく知りたいよ
この記事では、こういった疑問にお答えします。
好きなところから読めます
ABLやファクタリングを阻害している債権譲渡禁止特約
ABL(売掛金担保融資)やファクタリング等といった資金調達を利用する際、必ずと言っていい程、「取引先との契約に債権譲渡禁止特約はついていませんか?」という事を確認されます。
「債権譲渡禁止特約」とは、簡単に言えば「売掛金を第三者に譲渡することを禁止する契約」ということになるのですが、債権譲渡禁止特約がついている契約はABLやファクタリングによる資金調達ができません。
ABL(売掛金散歩融資)やファクタリングの詳しい解説は以下の記事を参考にして下さい。


大企業との取引契約に「債権譲渡禁止特約」が付いている事が多い
売掛金を担保に資金調達するABLや、売掛金を売買するファクタリングなどで資金調達を行う際、小口の取引を担保にファイナンスするよりも、大口の取引を担保にファイナンスした方が楽なのは言うまでもありません。
でも、肝心の大口の取引に債権譲渡禁止特約が付いている事が多いため、商品やサービスを販売してからも入金されるまで気長に待つほか手立てがありませんでした。
民法改正で債権譲渡禁止特約が付いた債権譲渡が可能に
2017年5月に120年ぶりとなる民法の大幅改正が行われ、債権譲渡禁止特約に関係する「民法466条(債権の譲渡性)」も改正され、改正民法が施行されれば債権譲渡が可能になります。
改正民法は2020年4月1日から施行されます。
民法の改正点(民法466条:債権の譲渡性)
民法466条(債権の譲渡性)の改正点は以下のとおりです。
改正前
- 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
- 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。
改正後
- 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
- 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
- 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
- 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。
引用元:WIKIBOOKS 民法466条
民法改正後は資金調達しやすくなる?
改正民法が施行されれば、取引先と債権譲渡禁止特約が付いた契約を交わしていても債権譲渡が有効になりますので、資金調達がしやすくなる可能性はあります。
ただ、改正民法が施行された直後にABLやファクタリング等の資金調達が活性化するようになるかと言えば、そこは疑問符がつくと思います。
与信の問題があるので、債権譲渡したら取引停止を持ち出される可能性がある
改正民法が施行されれば法的に債権譲渡が有効になりはしますが、債権譲渡禁止特約を付けているのは大企業が殆どですから、いくら法的に有効とは言え、債権譲渡での資金調達を行った取引先の与信が悪化する可能性が非常に高いです。
債権譲渡による資金調達を活用している事が判明したら、与信枠を減らされたり、最悪、取引停止を通告してくる企業も出てくる可能性はあります。
取引契約に特約を付けている企業の意識改革が必要
クライアント様が以前、債権譲渡の承諾を得るために取引先である大企業に相談した事がありましたが、「取引停止になるから無理だ」と一蹴されたとの事でした。
こういうケースを見てしまうと、法改正後にすぐに変わる事は難しいのでは無いかと思います。大企業の意識が変わらない限り、実務上変わらないという懸念が残ります。
まとめ
以上、民法改正による債権譲渡禁止特約が付いた債権譲渡に関するポイントや、改正民法施行後の資金調達の環境について解説しました。
2020年4月1日の施行日以降、すぐに変化が起こる事はなかなか考え難いですが、改正民法の施行をきっかけに大企業の意識も変わる可能性があります。
創業間もない企業や、リスケジュール等で資金調達が難しい企業が少しでも資金調達しやすくなるよう、法改正をきっかけに良い方向に進むことを願って止みません。