銀行口座の差押は簡単?債務者の口座の特定は難しい【今後は法改正で裁判所が照会】

事業再生
  • 取引先に何度も支払いを依頼しても入金してくれないので、銀行口座の差押えを検討しているよ。
  • 弁護士に相談したら「相手の銀行口座の特定が必要」と言われたけど、どうやって調べればいいのかな?
  • 債務者の銀行口座を調べる方法があれば詳しく教えて欲しいよ。

この記事では、こういった疑問にお答えします。

債務者の銀行口座を差押する場合、口座の特定が必要

債務者が保有している銀行口座を差押えして債権回収を図る場合、差押えの対象となる銀行口座の情報を債権者側で調べて特定する必要があり、以下2つの情報を特定する必要があります。

  • 金融機関名
  • 支店名

口座番号まで特定する必要はないので、調べるのは簡単に思えるかもしれませんが、

一口に金融機関といっても沢山ありますので、たくさんある中から特定しなければならないため、特定は困難を極めます。

銀行振込で一度でも入金されたことがある取引先であれば、どこの金融機関から振り込まれたのか、調べる事ができますが、それ以外に保有している銀行口座を特定するのはかなり難しいです。

企業の多くは複数の銀行口座を保有している

銀行口座を一つだけ保有して、全ての入出金を一つの口座で管理している企業は極めて稀で、殆どの企業は複数の銀行口座を保有しています。

よくあるケースは、以下のようなイメージです。

  • A銀行口座(借入あり:メインバンク) → 売上の入金、返済の引き落とし
  • B銀行口座(借入なし) → 販管費の細かい引き落とし専用
  • C銀行口座(借入なし) → 特に使用していない

銀行口座を一つしか保有していなければ、その一つだけを特定してしまえば債権回収を図れる可能性も高いですが、

複数の口座を保有している場合、特定する手間が増えるのはもちろん、差押が不発に終わる可能性が高くなります。

 

債務者が保有している銀行口座を調べる方法は3つ

  • 債務者の事務所にあるノベルティ等を目視で確認する
  • 弁護士照会制度を利用する
  • 探偵に依頼して調べてもらう

上記のとおりです。

債務者の事務所にあるノベルティ等を目視で確認する

かなりベタな方法ではありますが、債務者の事務所に直接訪問し、取引銀行の痕跡が無いか目視で確認するのです。

例えば、取引銀行から貰ったと思われるカレンダーや、ボールペン・メモ帳等が置いてないか等、直接目視で確認します。

銀行名さえ分かれば支店はある程度想像つくのではないかと思います。
(都心部は支店が多いため、支店の特定が難しい場合があります)

ノベルティを貰っても使わない場合がある

取引行からノベルティを貰っても、目につくところに置かなかったり、そもそもノベルティを使わない方がいます。

こうなると調べに行っても特定できずに終わってしまいます。

弁護士照会制度を利用する

弁護士に依頼して弁護士照会をしてもらう事で、債務者の銀行口座の情報を開示することができます。

開示される情報は支店名と口座番号の他、残高まで開示されますので、差押を実行する時の参考になると思います。

弁護士会照会(べんごしかいしょうかい)とは、弁護士法23条に定められた法律上の制度で、弁護士が担当する事件に関する証拠や資料を円滑に集めて事実を調査することを目的としています。照会は弁護士個人が行うのではなく、担当は弁護士会です。

全ての金融機関が弁護士照会に応じる訳では無い

弁護士照会をかければ銀行口座を確実に特定できると思われるかもしれませんが、弁護士照会をしたからといって、必ずしも相手の銀行口座が判明するという事ではありません。

銀行によっては弁護士照会をかけても「お客様に対する守秘義務の観点から、原則として、本照会に対して回答することはできない」等というNG回答をしてくる銀行もあります。

全ての銀行が弁護士照会に応じる訳ではありません。

探偵に依頼して調べてもらう

探偵に頼んだからといって、確実に結果が分かるかというと、一概にそうとも言い切れません。口座情報が特定できない事もあります。

 

債務者が保有している銀行口座を特定できない時の奥の手

債務者が保有している銀行口座をどうしても特定できないけど、差押えは何が何でも実行したいという場合、一つだけ方法があります。

  • 絨毯爆撃による差押えを行う

上記のとおりです。

絨毯爆撃による差押えを行う

債務者の口座が特定できない時の手段として、絨毯爆撃をしかけるという方法があります。

これは、債務者の近隣にある金融機関に全て差押えをかけるという荒業です。荒業というよりは、雑な方法と言った方が早いです。

要するに「数打ちゃ当たる戦法」です。

絨毯爆撃は差押え可能な金額が減少するので有効な方法とは言い難い

絨毯爆撃は債務者の会社から近い金融機関に対して手当たり次第押さえるため、一つ一つの銀行口座の差押え可能金額が減少してしまうというデメリットがあります。

例えば、債権額が1,000万円あり、絨毯爆撃で差押えをしようと思ったら、下記のように差押え金額を分散させる必要があります。

  • A銀行 → 200万円
  • B銀行 → 200万円
  • C銀行 → 200万円
  • D銀行 → 200万円
  • E銀行 → 200万円
簡易的に一律200万円という金額を入れましたが、実際は自由に割振る事ができます。

差押金額以上の差押は不可能

仮に、債務者が保有しているA銀行の口座に500万円の預金があり、運よく差押えができたとします。

しかし、A銀行に対する差押の上限は200万円なので、500万円の預金があっても、200万円以上の金額については差押の効力は及びません。

つまり、残りの300万円は債務者が自由に使う事ができるのです。

 

債務者の銀行口座を差押えして債権回収を図る時の問題点

債務者の銀行口座を差押して債権回収を図る際、問題点が2つあります。

  • 預金を引出されたら終わり
  • 債権者の負担が半端ない

上記のとおりです。

預金を引出されたら終わり

銀行口座を差押えるのは簡単ではありません。

訴訟を起こし、手間とコストをかけて債務者の銀行口座を特定しても、債務者に「差押されるかもしれないから預金は全て引き出しておこう。」と、銀行口座から預金を下ろされてしまったら差押は不可能です。

債権者の負担が半端ない

債権者が債務者の銀行口座を差押える場合、以下のステップで差押することになります。

  • 相手方に訴訟を起こし、
  • 勝訴して債務名義を取得し、
  • 債務者の銀行口座を債権者が特定し、
  • 対象となる銀行口座を差押する

正直、債権者の負担が半端ないです。

訴訟を起こすだけでも費用がかかるのに、口座の調査まで債権者が行うとなると、かなりの負担です。

差押えして、多少なりとも回収できれば報われると思いますが、不発だった場合、全く報われません。せめて銀行口座を特定する手間だけでも省略されれば回収しやすくなると思います。

 

民事執行法改正により、債務者口座を裁判所が特定

この記事で解説しているとおり、債務者の銀行口座を差押する場合、基本的に債権者が銀行口座を調べる必要がありましたが、民事執行法改正で財産開示請求が強化され、裁判所が債務者の銀行口座情報を取得できるようになります。

 

以下は、2016年9月13日に公表された日経新聞の記事で、2020年の民事執行法改正で裁判所が銀行などに預金口座情報を照会できる制度の検討を始めたという記事です。

債務者口座、裁判所が特定 民事執行法改正へ
養育費や賠償金、不払い防止

法務省は12日、民事裁判の支払い義務を果たさない債務者の預金口座情報を、裁判所が銀行などに照会できる制度の検討を始めた。金田勝年法相が民事執行法の見直しを法制審議会(法相の諮問機関)に諮問した。2018年度以降の法改正を目指す。離婚時に取り決めた養育費や判決が命じた賠償金が支払われない場合、銀行口座を差し押さえる「強制執行」により回収しやすくする。

出典:債務者口座、裁判所が特定 民事執行法改正へ :日本経済新聞

この記事が公表されてから、3年近く経ちましたが、2019年5月10日に改正民事執行法が国会で成立しました。 

改正民事執行法の概要は法務省が公表している以下のPDFファイル(235KB)をご確認下さい。

参考リンク:民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律の概要

 

詳細内容を確認したい方は法務省のページに記載されていますので、以下のリンクをクリックしてご確認下さい。

参考リンク:法務省:法制審議会-民事執行法部会

「民事執行法制の見直しに関する要綱案」(平成30年8月31日決定)の「2 第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の新設」という項目の(4)債務者の預貯金債権等に係る情報の取得(3P)に記載があります。

裁判所が情報開示を要請すれば、銀行も対応せざるを得ませんから、今後は口座情報調査の手間が省略されます。

調査の手間が省略されれば債権回収の迅速化が図れますので、改正民事執行法が施行されれば、未回収による泣き寝入りが大幅に減るかもしれませんね。

 

改正民事執行法の施行日は、令和元年5月17日の公布日から起算して一年以内に施行されるとのことです。

参考リンク:法務省:民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案

 

まとめ

以上、銀行口座の差押は簡単?債務者の口座の特定は難しい、ということについて解説しました。

現状、債務者の口座を差押するには債権者の負担がかなり大きいですが、2020年の民事執行法の改正で裁判所が照会請求するようになりますので、未回収による泣き寝入りが大幅に減るのではないかと思います。

 

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