新たな信用保証制度が平成30年4月1日からスタートしています。
今回は決定している制度概要について説明していきたいと思います。
- 中小企業庁:信用補完制度の見直し
- 中小企業庁:中小企業・小規模事業者の事業の発展を支える持続可能な信用補完制度の確立に向けて(概要)PDF(319KB)
信用保証制度の見直しの背景
信用保証制度は中小企業の資金繰りを支える重要な制度ではありますが、中小企業及び金融機関が信用保証制度に依存した結果、
- 信用保証収支が18年間連続で赤字
- 現行の制度では金融機関が融資先企業の事業性評価や融資後の期中管理、経営改善の指導・支援する動機が働き難い
- 企業側も資金調達が容易にできる事から、経営改善への意欲が失われやすい
といった副作用も指摘され続けていました。
信用保証制度の維持・継続のためにも、企業のライフステージに応じた資金需要に対応していく体制を構築していくとともに、中小企業の経営改善・生産性向上を一層進める仕組みを構築することが必要であるという考え方の下、現行の制度が見直されました。
企業のライフステージ別の保証制度見直し案骨子は下記のとおりです。
基本的な前提として、「責任共有制度の80%は継続する。しかしながら、今後も議論は続けていく。」としています。
創業期
基礎情報の不在等によりリスク判定が困難な中でも資金供給を可能とし、多くの創業チャレンジを促すべく、創業者が手元資金なく100%保証を受けられる限度額を拡充する。(1,000万円→2,000万円)
拡大期
- 保証協会と金融機関の連携(リスク分担)を通じた中小企業の経営改善・生産性向上。
- 金融機関が、保証を通じて必要十分な信用供与を行いつつ、事業を評価した融資を行い、その後も適切な期中管理・経営支援を実施することを促す。
- 保証付き融資とプロパー融資を適切に組み合わせるリスク分担を行う。
持続的発展
特に資力に乏しく取引先の受注減等の突発的な事象により経営が急変する小規模事業者の持続的発展を支えるため、小口向けの100%保証を拡充する。(1,250万円→2,000万円)
危機時
- セーフティネット保証による副作用の抑制と大規模な経済危機等への備え
- 大規模な経済危機等の事態に際して、適用期限を原則1年とするなど予め区切って迅速に発動できる新たなセーフティネット制度を整備する(別枠・100%保証)
- セーフティネット5号(不況業種に属する中小企業者の支援措置)については、金融機関の支援の下で経営改善や事業転換等が促されるよう保証割合を一律80%に改正する。
再生期
事業承継
事業承継を一層促進するため、後継者が株式取得等に必要となる資金を円滑に調達できるよう保証メニューを充実させる。
経営改善・事業再生の促進
- 経営改善・事業再生を促す保証メニューを充実させるとともに、抜本再生の円滑化 (求償権放棄条例の整備等)を進める。
- 必要に応じて、保証協会も経営支援を実施すべく機能強化を図る。
再チャレンジ支援
- 経営者保証ガイドラインの運用開始から一定期間が経過したところ、保証制度における運用を見直すこと等により、失敗した場合にも再チャレンジしやすく、思い切った設備投資・事業拡大ができる環境を整備する。
円滑な撤退支援
・経営者が撤退を決断する場合にまず必要となる資金(買掛金処理、原状復帰費用等のつなぎ資金)の調達が円滑に行えるよう、保証メニューを充実させる。
地方創生への貢献等
- 保証協会が地方創生に一層の貢献を果たすべく、地域の資金需要に応えるための保証メニューの拡充や、再生ファンド以外のファンドに対しても出資ができるようにするための措置を講じる。
- 保証協会と金融機関のリスクシェアを始めとする今般の各種制度改正の効果を十分に検証した上で、中小企業の経営改善に一層繋げる等の観点から保証料率・保険料率の在り方についても検討を進める。
まとめ
平成30年4月1日から施行された新たな信用保証制度は、制度概要を見ると返済猶予のかわりに経営改善、担保や保証人に過度に依存しない「事業性評価」に基づく融資を優先する方針がさらに明確になったといえます。
中小企業が今後、金融機関から融資を受ける際、取引金融機関とのコミュニケーションがますます重要になります。
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