【銀行融資】連帯保証を外す事はできる?【経営者保証ガイドラインを活用すれば可能】

金融機関から借入を起こす際に連帯保証を入れたけど、外せないかな。

数年前に役員だった配偶者に連帯保証を入れて貰ったけど、今は経営に一切関与していないし、会社にも全く出入りしていないから、できれば連帯保証契約を外してあげたい。

何年か前に、新規借入を起こす際、銀行から「第三者の連帯保証人を入れないと融資できない」と言われて親戚に連帯保証してもらったけど、できれば連帯保証を外してあげたい。

連帯保証契約を外す方法があれば詳しく知りたい。

この記事では、こういった疑問にお答えします。

目次

連帯保証契約を解除することは可能です【結論】

中小企業が金融機関から融資を受ける時は法人の代表者である経営者個人が借入の連帯保証を入れる事が一般的です。

また、最近は殆ど聞かなくなりましたが、数年前までは以下のような状況にある企業が新規融資を依頼すると、第三者の連帯保証人を求められるケースが多々ありました。

  • 借入金の残高が多過ぎる
  • 財務内容が悪化している

この時、第三者の連帯保証人を入れて借入を起こし、完済できずに今日まで至ってしまっているケースは少なくありません。

こうした連帯保証契約は従来、解除することはほぼ不可能な状態でした。

従来の方法では実行可能性は非常に乏しい

解除する方法は全く無い訳では無いのですが、選択肢は下記2つしかありませんでした。

  • 代わりの人を用意する → そんなもの好きはほとんどいない
  • 一部弁済を条件に解除するという → 〇千万もの負債の「一部弁済」というのは、金額が大きすぎる

ご覧のとおり、ハードルは非常に高く、解除する方法は存在するものの、実行可能性は非常に乏しいものでした。

しかし、平成26年2月1日から開始された「経営者保証に関するガイドライン」の施行により、状況は大きく変わりました。

経営者の個人保証はもちろん、第三者の連帯保証契約を解除することは可能になったのです。

経営者保証に関するガイドラインを活用する事で保証解除が可能

「経営者保証に関するガイドライン(以下、「経営者保証GL」)」とは、融資を受ける際、経営者保証が不要な条件を明らかにするとともに、早期に事業再生や廃業を決断した場合、経営者に一定の生活費を残し「華美でない自宅」に住み続けられる可能性などを示したものです。

新規融資だけでなく、既借入金についても融資条件の見直しや借換えなどの際に考慮されます。

経営者保証GLに法的な拘束力はありませんが、「中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルール」と位置付けられており、関係者が自発的に尊重し、遵守することが期待されています。

中小企業の経営者保証に関する契約時及び、保証履行時等における中小企業、経営者及び金融機関による対応についての、中小企業団体及び金融機関団体共通の自主的自律的な準則として、日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会を事務局とする「経営者保証に関するガイドライン研究会」において策定・公表されたガイドラインです。

出典:経営者保証に関するガイドライン

経営者保証GLは「自主的自律的な準則」ではありますが、多くの金融機関は「誠実に対応するよう努めております」と公表しています。

参考までに、メガバンクのWebサイトのリンクを貼っておきます。

ご覧頂ければ分かる通り、どのページにも「誠実に対応する」との記載がありますので、申立てて無視されるような事は基本的には無いと言えます。

ちなみに、下記記事で経営者保証GLの取り組み件数をまとめていますので、件数に興味のある方はどうぞ。

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経営者保証GLを活用してできること

経営者保証GLを活用してできることは下記のとおりです。

  • 新規融資:経営者保証なしで新規融資を受けることができる可能性があります。
  • 既借入金:法人と経営者個人のお金が明確に分離されている場合などに、連帯保証契約を解除できる可能性があります。
  • 廃業時:早期に事業再生や廃業を決断した際に一定期間の生計費や自宅等の資産を残せる可能性があり、返済しきれない保証債務は免除してもらえる可能性があります。

経営者保証に関するガイドラインを活用した連帯保証契約解除のよくある勘違い3つ

経営者保証に関するガイドラインを活用した連帯保証契約解除のよくある勘違いは下記3つです。

  • 金融機関に申入れるだけで簡単に解除できる
  • ノーダメージで連帯保証を解除できる
  • タダで連帯保証契約を解除できる

上記のとおりです。

金融機関に申入れるだけで簡単に解除できる

下記2つの立場から、順に解説します。

  • 法人の代表者の場合
  • 経営と無関係な第三者の連帯保証人の場合

法人の代表者の場合

貸し手である金融機関が連帯保証契約の解除に応じる訳ですから、基本的に簡単ではありません。

ガイドライン本則6項に「既存の保証契約の適切な見直し」という項目がありますが、既借入金の保証を見直すにあたり、「対象債権者は第4項(2)に即して」とあります。

対象債権者とは下記のとおりです。

  • イ)法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている。
  • ロ)法人と経営者の間の資金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えない。
  • ハ)法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る。
  • ニ)法人から適時適切に財務情報等が提供されている。
  • ホ)経営者等から十分な物的担保の提供がある。
出典:経営者保証に関するガイドライン(本則)

つまり、法人と経営者個人の財布を混同せずに、法人のお金と経営者個人のお金はきちんと財布を分けることが大前提となります。

経営と無関係な第三者の連帯保証人の場合

第三者の連帯保証契約を解除する際、金融機関に申入れるだけで解除して貰えるほど簡単ではありません。

主債務者の返済状況・財務内容にもよりますが、リスケジュール中に保証解除を申し出ると、基本的には一部弁済を求められる場合が殆どですので、ご注意ください。

また、第三者の連帯保証契約を解除するにあたり、弁護士による資産調査を求められることが条件になります。

自分で資料を作成して申立てても「弁護士の表明保証が無いから無理です」と一蹴されれ終わるだけなので、ご注意ください。

第三者の連帯保証契約の解除について、経営者保証に関するガイドラインの本則に記載はありません。

こちらは、金融庁の中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針に記載されていますので、興味のある方は以下のリンクから該当ページに移動して確認して下さい。

第三者の個人連帯保証の保証履行時等においても、「経営者保証に関するガイドライン」は適用され得るとの点に留意し、必要に応じ、ガイドラインの活用を検討し、ガイドラインに基づく対応を行う態勢となっているか

出典:中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針 : 金融庁

ノーダメージで連帯保証を解除できる

ノーダメージで保証契約を解除できるかどうかは、約定弁済中なのか、リスケジュール中なのかで大きく分かれます。

例えば、約定弁済中に保証解除を申入れた場合、金融機関からすれば、弁済して貰える可能性が高いと判断して、ほぼ無条件(ノーダメージ)で解除に応じて貰える可能性は非常に高いです。

しかし、リスケジュール中の場合、ガイドライン本則に記載してある以下の条件に引っかかるため、金融機関からすると応じる事はできません。

ハ) 法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る。

また、第三者の連帯保証については、解除の条件が悪化するのは間違いありません。

約定弁済中であればノーダメージで解除できたとしても、リスケジュールした後に保証解除を申入れした場合、条件が悪化するのは間違いありません。

タダで連帯保証契約を解除できる

基本的にタダで連帯保証契約を解除することはできません。

なぜなら、支援専門家による申入れが必要になるからです。

連帯保証契約を申入れるにあたり、立場別に専門家の関与が必要となりますので、費用は必ずかかります。

  • 経営者が連帯保証契約を解除する場合 → 会計事務所の関与が必要(要会計参与)
  • 第三者の連帯保証契約を解除する場合 → 弁護士による申立てが必要(要資産調査)

連帯保証契約を最小限のダメージで解除するポイント2つ

連帯保証契約を最小限のダメージで解除するポイントは下記2つです。

  • 約定弁済をしている間に申立てる
  • 資金繰りに余裕があるうちに申立てる

上記のとおりです。

約定弁済をしている間に申立てる

経営者個人が連帯保証契約の解除を申立てる際、約定弁済中であるということが前提となりますから、正常な金融取引を行っている間に申立てる必要があります。

また、第三者の連帯保証契約を解除する場合、主債務者である法人の収益力で借入の返済が可能かどうか?という部分が判断されますので、保証契約の解除にあたり、一部弁済などの条件を出されない(出されても金額が低い)可能性が高くなります。

資金繰りに余裕があるうちに申立てる

タダで連帯保証契約を解除できる」という項目でも解説したとおり、経営者保証GLを申立てるにあたり、以下の支援専門家の関与が必ず必要になります。

  • 経営者個人 → 会計事務所(公認会計士・税理士)
  • 第三者の連帯保証人 → 弁護士

資金繰りに余裕があれば依頼するのに躊躇するような事は無いと思いますが、資金繰りに余裕がなくなると、依頼する時の費用を考えると、二の足を踏んでしまい事になりかねません。

実際のところ、資金繰りが厳しくなった状態で「第三者の連帯保証契約を解除したい」などと筆者のもとにご相談を来られた方に、

「弁護士の資産調査が必要だから、弁護士費用が必要ですよ」と伝えると、急に二の足を踏んでしまう方が少なくありません。

数十万の手続き費用で二の足を踏んでしまい、第三者の連帯保証人の方の自宅等が換価処分されたりしたら目も当てれません。

第三者の連帯保証人はそもそも経営と関係ないのですから、資金があるうちに早めに解除してあげるようにしましょう。

まとめ

以上、既存の借入金の連帯保証を外す事はできるのか?という事について解説しました。

経営者保証に関するガイドラインを活用すれば連帯保証契約を外せる可能性がありますので、「連帯保証契約を解除したい」と少しでもお考えでしたら、手元資金があるうちに、早めに検討するようにしましょう。

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