リスケジュールを知らない金融機関の支店長

2009年の夏ごろの事。まだ「中小企業金融円滑化法」という法律が出てくる以前のお話です。

クライアント様のお手伝いで、取引行へリスケジュールのお願いに回った時の事でした。

 

クライアント様の取引状況は、メガバンク1行、地銀2行(第一・第二地銀)、信用金庫、政策公庫という感じです。

メインバンクが第一地銀で、その次がメガバンクでした。その他は金額的にたいして差が無かったと記憶してます。

このまま約定弁済を続けていたら、2ヵ月後に間違いなく倒産してしまうので、リスケジュールが急務でした。

例にならい、融資額の大きいところから順番に社長と一緒にお願いに周りました。

 

この頃のリスケジュール事情といえば、今みたいに、

「リスケして下さい」
「分かりました」

という簡単なものではなく、お願いに行っても、2~3回ぐらいは断られるような感じです。(都心のメガバンクはそうでも無かったです。)

とはいえ、最終的には応諾してくれるのですが、この頃は「とりあえず入り口で断られる」というケースが比較的多かったです。

 

微妙に話がそれたので、戻しますね。

融資額の大きい取引行の4行にお願いに周り、最後、一番融資額の少ない信用金庫にお願いに行ったのですが、その時、某県信用金庫の支店長さんから耳を疑うような事を聞かれました。

「リスケジュールって何ですか?」
「条件変更なんてできるんですか?」

と聞かれたのです。

 

ウソつけ!と思ったでしょう。

分かります。私もそう思いましたし、一緒にいた社長も目が点になってました。

 

この信用金庫に来る前に、他の金融機関の担当者の方と、リスケジュールの相談をしていたのに、信用金庫に来たとたん、こんな事を言われたのですから、事情を知らないコチラとしては、「この支店長、めちゃくちゃ性格が悪いな」と思いました。

人が良さそうな顔をしてるけど、ワザとすっ呆けて、こちらを困らせてるんじゃないのか?と本気で思ってました。

信用金庫の相談が終えた後、社長と二人で、「あの支店長、人がよさそうな顔をしてたけど、とんだタヌキですね。」なんて話をしながら帰ったのを覚えてます。

 

この出来事があってから、1ヵ月半ぐらい経った頃でしょうか。

信用金庫以外の金融機関はリスケジュールするとの足並みが揃ったにも関わらず、信金だけがいつまで経っても返事が無いので、メガバンクの担当者がかなりイラついた感じで、「現状を報告して欲しい」と私に聞いてきた事がありました。

 

「信金さんの返事はどうなんですか?信金さん以外、プロラタ返済で納得しているのに、まさか、信金だけ約定で返済するつもりですか」

 

「いえ、それがですね、信金の支店長が、リスケジュールを知らないと言ってまして、「本部に確認をする」と言ったきり、一ヶ月近く返事がまだ来て無いのです。」

 

「は?そんなワケ無いでしょ。リスケジュールを知らない?」

 

「ええ、そうみたいです。ホントかどうか分かりませんが。」

 

「いやいや、そんな事あるわけ無いでしょ。」

 

「いえ、別に笑わそうとして言ってるんじゃないんです。マジ話ですよ。」

 

「その人は支店長なんでしょ?」

 

「そうです、支店長です。先日、名刺を頂きました。」

メガバンクの担当者が全く信じてくれないので、支店長の名刺を見せました。

このやり取りを見ていた、担当者の部下の方も、「マジっすか、あり得ないんですけど。」と小さな声でボソッと言ってました。

 

あまりにウソ臭い話で、本部に稟議をかける際、説明しようが無いから、信金の支店長に直接話をさせて欲しいと言われました。

私も、こんな事をいちいち「ウソじゃないんですよ」と力説するのもアホらしかったので、メガバンクの担当者と相談し、“支店長を会社の様子見に来てもらい、その日に、メガバンクの担当者も時間をずらして訪問し、ワザとバッティングする”という作戦を立てました。

 

社長に信金の支店長にアポを取ってもらい、訪問スケジュールをメガバンクの担当者に教え、支店長が訪問する30分後にわざとらしく「様子見に来ました。」と訪問して、社長(私含む)信金支店長、メガバンク担当者の3社で話し合いができるようにしました。

 

そして作戦当日。

 

会社の様子見・打ち合わせを兼ねて、信金の支店長が訪問してきました。

結局、この日は具体的な回答を持ってこなかったのですが、支店長が帰ろうとした際、タイミングよく、メガバンクの担当者2名が訪問し、うまく同席させる事に成功しました。

名刺交換し、軽い雑談を済ませた後、すぐにリスケジュールの話を切り出しました。

 

「いや~、そういえば、先日、社長から資金の事で相談があると言われたので、当行まで足を運んでいただいたのですが、それが、条件変更のお話だったんですよ。当行もこれ以上の融資は決済が下りないので、条件変更が妥当なのかなと、検討している最中です。御行ではどうですか?」

 

「M銀行さんは本当に条件を変更されるのですか?」

 

「ええ、実はすでに本部の稟議が通ってますので、当行はそのように致しますが、御行は?」

 

「いえ、私もこのような事が初めてで、本当にそのような事ができるのか、現在、本店に問い合わせているところなのです。」

 

「なるほど。そうなんですか」

 

「明日、明後日ぐらいに回答がくると思います。何分、当支店では初めての事なので、どのように対応したら良いのか、分らないのです。」

 

「なるほど。そうですか。初めてでしたらそうなりますよね。」

 

「M銀行さんは応諾するんですよね。その旨、当行の本部に伝えても宜しいでしょうか。」

 

「構いませんよ。」

 

「ありがとうございます。すいません。そろそろ戻らなければならないので、これで失礼致します。」

 

「こちらこそ、お忙しい中引き留めてしまい、申し訳ありませんでした。」

次ぎの訪問先があるのかどうか分りませんが、信金の支店長はそそくさと帰っていきました。

 

メガバンクの担当者の方々が、信金支店長が事務所から出て行ったのを確認すると、

「あの人本当に知らなそうだったな。」
「マジだったんですね。」

と、話しながら帰って行きました。

ちなみに、この話を金融機関の方や、金融機関出身のコンサルタントの方にすると、全く信じてもらえません。どんなに力説しても、「そんな人見たこと無いな」と一蹴されます。でも、本当にあった話なんですよ。

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ABOUTこの記事をかいた人

1977年神奈川県生まれ。コンサルティング会社勤務を経て独立。店舗ビジネスに特化したコンサルティング業務を展開していたが、身近な人の倒産を目の当たりにした事をきっかけに事業再生に目覚め、平成21年5月より、事業再生に参入。全国各地の中小企業の再生業務に関与し、中小企業の事業再生のサポートを行っている。 平成23年8月、M&Aに特化した株式会社クレアークを設立、代表取締役に就任。現在に至る。業務の幅を広げる事により、サポートの幅を広げている