銀行に手形割引を断られる原因と対処法を解説【資金調達方法あり】
銀行に手形割引を依頼したら断られました。
今まで割引してくれたのに、断られる原因が分かりません。
今後の資金繰りはどうすればいいのか、解決策があれば教えて欲しいです。
この記事では、こういった疑問・要望にお答えします。
- 銀行が手形割引を断る原因4つ
- 銀行に手形割引を断られた時の対処法4つ
なお、本記事の筆者は、2009年から現在まで中小企業の資金繰り改善コンサルタントとして活動しており、年商数百万の個人事業主から年商10億円以上の企業まで、幅広く対応してきました。
こういった経験をもとに、本記事では、銀行に手形割引を断られる原因と対処法をまとめました。
今まで、取引先から受取った手形を銀行に割引依頼をすれば普通に割ってもらえていたのに、事前予告なしに、突然、手形割引を断られることがあります。
何か月か前にでも「これ以上割るのは難しい」などと事前に予告してくれれば、他行に相談したり、銀行融資以外の資金調達方法を検討するなど、対処のしようがありますが、急に言われても対処するのは難しいです。
本記事では、銀行に手形割引を断られる原因と、断られた場合の対処法を解説していきます。事前予告なしでいきなり手形割引を断られて、この先どうすればいいのか?とお悩みの方の参考になれば幸いです。
最初に、まずは銀行が手形割引を断る原因から解説していきます
銀行が手形割引を断る原因4つ
銀行が手形割引を断る原因は下記4つです。
- 割引枠が無くなったから
- 個別銘柄の割引枠がなくなった
- 手形振出人の与信が悪化した
- 融通手形と判断されて断られた
上記のとおり。
割引枠が無くなったから
基本的な前提として、手形割引は振出人の与信に依存しますので、手形の銘柄(手形を振出した会社)が良ければ割引いて貰えます。
ただし、振出人の与信に100%依存しているわけではありません。
理由は、手形振出人が当座預金不足を起こして不渡りを出してしまったら、割引を行った銀行は割引依頼人に手形を買戻してもらう必要があるからです。
そのため、銀行は手形振出人だけでなく、割引依頼人の融資審査も行い、割引枠を設定しています。
例えば、銀行が割引枠を2,000万円に設定していて、1,700万円の割引を利用した場合。
- 銀行が設定している割引枠:2,000万円
- 割引利用残高:1,700万円
- 利用可能枠:300万円
利用可能枠は300万しか残らなくなります。
この状態で、追加で500万円の手形割引を依頼すると割引枠の上限を超えてしまうため、手形割引は断られます。
個別銘柄の割引枠がなくなった
銀行は個別銘柄においても割引枠を設定しています。
例えば、手形取引を行う取引先が3社ある場合、下記のように取引先ごとに与信を設定します。
- A社:2,000万円
- B社:1,000万円
- C社:500万円
A社は地域でも有名な企業なので与信が高い。そのA社が手形振出人であれば2,000万円を上限に割り引いてもよい。
B社は業歴が長く健全経営を続けているので、与信が高い。そのB社が手形振出人であれば1000万を上限に割り引いても良い。
C社の財務内容は比較的健全ではあるものの、事業規模が大きく無いため、C社が振り出した手形の割引枠は500万円まで。
このように、銀行は個別銘柄ごとに割引枠を設定するため、取引枠を超えた状態で手形割引を依頼すると、割引は断られます。
手形振出人の与信が悪化した
手形振出人の与信が悪化すると、手形割引を断られることがあります。
本記事の「割引枠が無くなったから」でも解説したとおり、手形割引は手形振出人の与信に依存するため、割引依頼人の与信が良くても、手形振出人の与信が悪化すれば割引枠は縮小します。
縮小しても割引枠が残っていれば割り引いてくれますが、枠が無ければ断られます。
融通手形と判断されて断られた
割引を依頼した手形が以下いずれかのケースに該当していると、銀行から「融通手形の可能性が高い」と判断され、割引を断られる場合があります。
融通手形と疑われやすい代表的なケースは下記4つです。
- 急に取引額が大きくなった場合
- 手形振出日・支払期日が通常と異なる場合
- 金額がキリのいい数字
- 取引の流れが怪しい場合
上記の順に解説します。
急に取引額が大きくなった
急に取引額が大きくなると、融通手形を疑われます。
例えば、平均月商が1,000万円で、普段の割引依頼額が400万~500万円ぐらいだったものが、
急に1,000万円、1,500万円、2,000万円などといった感じに、手形の額面が膨れ上がった場合(売上規模に比べて急に金額が大きくなった場合)、不自然に思われ、融通手形の可能性が高いと判断されます。
手形振出日・支払期日が通常と異なる場合
手形振出日・支払期日が通常と異なる場合も融通手形を疑われやすいです。
例えば、いつも取引している企業の受取手形の決済日は毎月25日なのに、突然、支払い期日が5日や10日などに変わった手形の割引を依頼すると、銀行から不自然に思われ、割引を断られることがあります。
金額がキリのいい数字
手形の額面がキリのいい数字だと怪しまれやすいです。
例えば、今まで「2,566,430」といった金額で取引していたものが、
急に「3,000,000」とか「5,000,000」などのキリのよい数字になると融通手形を怪しまれて割引を断られます。
取引の流れが怪しい場合
商流が不自然だと割引を断られます。
例えば、割引依頼人がハウスメーカーなのに、建築資材会社が振り出した手形を持参して「割引いて欲しい」というのは、取引の流れからいって不自然です。
また、全くかかわりのない異業種から振出された手形を割り引こうとすると、銀行から怪しまれ、割引を断られます。
以上、銀行が手形割引を断る原因を解説しました。続いて、銀行に手形割引を断られた時の対処法を解説していきます。
銀行に手形割引を断られた時の対処法4つ
銀行に手形割引を断られた時の対処法は下記4つです。
- 他行に割引をお願いする
- 手形割引専門のノンバンクに割引依頼をする
- 緊急時の資金繰りを実行する
- 銀行融資以外の資金調達方法を検討する
上記のとおり。
他行に割引をお願いする
メインバンクに割引を断られても、他行が手形を割ってくれることがあります。
メインバンクに断られたら、他行に割引を相談してみましょう。
手形割引専門のノンバンクに割引依頼をする
銀行で割って貰えなくても、ノンバンクであれば割って貰える可能性があります。
割引手数料は銀行と比べて高くつきますが、銀行よりも審査は寛容で割引実行も早いです。
銀行に割引を断られたら、手形割引専門のノンバンクに割引を依頼してみましょう。
緊急時の資金繰りを実行する
銀行・ノンバンクに割引を断られたら、通常通りの資金繰りで支払いを行うと資金ショートを起こす可能性が高くなります。
資金ショートを回避するためにも、通常の資金繰りではなく、緊急時の資金繰りを実行して、資金ショートを回避するようにしましょう。
緊急時の資金繰りとは、支払いに優先順位をつけ、優先順位の高い順から支払いを済ませる施策です。優先順位の低い支払いは支払いの減額、あるいは一時的にストップするなどして対応します。
具体的な支払いの優先順位は次のとおりです。
- 手形支払い
- 従業員の給料
- 取引先の支払い
- 事務所維持費(必要最低限)
- 税金・社会保険料
- 銀行返済
詳しくは「銀行融資を断られたら一刻も早くやるべき6つの事!現状把握から資金繰りの見直しについて解説」をどうぞ。
銀行融資以外の資金調達方法を検討する
手形割引を断られても、銀行から「割引は難しいが、〇〇融資なら…」、「系列のビジネスローンなら」などの提案があればいいですが、銀行から何も提案されない場合、銀行融資は期待できません。
このような場合、ノンバンクでの資金調達を検討することになります。
金利は高くつきますが、審査も早く、急な資金ニーズに対応してくれますので、どうしても支払いで資金が必要という時は、ノンバンクの利用も視野に入れるようにしましょう。
詳しくは別記事の「つなぎ融資を最短即日で資金調達する方法」をどうぞ。
まとめ
以上、銀行が手形割引を断る原因と断られた時の対処法を解説しました。
事前予告なしで割引を断られたら焦ると思いますが、資金調達の選択肢は残されています。
またもし、資金調達が間に合わず、資金ショート不可避の状態に陥ったとしても、緊急時の資金繰りを実行すれば資金ショートは回避可能です。
厳しい局面ではありますが、まずは落ち着いて今後の対処法を検討してください。