代表者の個人信用情報がブラックでも銀行融資を受けられる?【可能性あり】
代表者の個人信用情報がブラックでも銀行融資を受けられますか?
法人融資は代表者がブラックだと審査に影響するのか詳しく知りたいです。
本記事では、こういった疑問・要望にお答えします。
- 法人と個人の審査の違い
- 代表者の個人信用情報がブラックで銀行融資を受けられないケース4つ
- ブラックで銀行融資を受けようとしている方のよくある質問
なお、本記事の筆者は、2009年から現在まで中小企業の資金繰り改善コンサルタントとして活動しており、年商数百万の個人事業主から年商10億円以上の企業まで、幅広く対応してきました。
こういった経験をもとに、本記事では、個人信用情報が銀行融資の審査の影響度合いに関する情報をまとめました。
「個人信用情報がブラックだと銀行融資を受けることはできるのか?」とご心配な方向けに、融資の可否や、どのようなケースに該当すると融資を受けられないのかを詳しく解説していきますので、ぜひ最後までお読み頂ければと思います。
ちなみに結論から言うと、代表者の個人信用情報がブラックでも銀行融資を受けられる可能性があります。
理由は、法人と個人では審査の重点項目が異なるからです。
法人と個人の審査の違い
法人と個人の審査の違いは下記のとおりです。
- 法人は事業全体を評価
- 個人は収入を評価
上記の順に解説します。
法人は事業全体を評価
法人融資は事業全体を評価したうえで、融資の審査を行います。
ちなみに、評価方法は定量評価と定性評価の2種類あり、銀行は定量評価に特に重要視します(定量評価が8割です)。
- 定量評価
- 財務内容 → 決算書の数字に基づく評価
- 定性評価
- 企業に関すること
- 経営者 → 経営者の資質、業界経験・知識、スキルなど
- 株主 → 株主構成
- 従業員 → 年齢構成、キャリアなど
- 利害関係者に関すること
- 取引先 → 販売先、仕入れ先、取引金融機関など
- 外部関係者 → 会計事務所、弁護士など
- 業界及び市場に関すること
- 業界の特徴 → 事業規模、収益性、成長性など
- 市場環境 → 参入障壁、法的規制、海外市場など
- 企業に関すること
事業全体を評価したうえで融資の可否を判断するため、代表者の個人信用情報が良くても財務内容や業績が悪ければ審査に通らないです。
個人は収入を評価
個人に対する貸付の場合、「申込者の収入の範囲内で全額返済可能か?」を審査されます。
ブラックということは、
- 現在の収入では返済できないほど借入過多の状態にある
- 過去に多額の借入を利用して、現在返済していない(借り逃げしようとしている可能性あり)
などと判断されますので、個人で借入する場合、信用情報がブラックだと審査に不利です。
このように、法人融資は個人の信用情報よりも事業自体を評価していますので、代表者個人の信用情報がブラックでも、事業の収益性が高ければ融資を受けれる可能性があるのです。
ただし、次の項目で紹介するケースに一つでも該当すると法人で融資を受けることできませんので、ご注意ください。
代表者の個人信用情報がブラックで銀行融資を受けられないケース4つ
代表者の個人信用情報がブラックで銀行融資を受けられないケースは下記4つです。
- 法人融資申し込み先の銀行で代表者個人が事故を起こした過去がある
- 求償債務を負っている(信用保証協会に代位弁済している)
- 代表者個人が税金を滞納している
- 代表者個人所有の不動産が差し押さえを受けている
上記のとおりです。
法人融資申し込み先の銀行で代表者個人が事故を起こした過去がある
法人融資申し込み先の銀行で代表者個人が事故を起こした過去があると、その銀行から融資を受けることはできません。
例えば、個人が銀行から借入できる代表的なもので、下記4つの融資形態があります。
- フリーローン
- 教育ローン
- マイカーローン
- 住宅ローン
借入を利用して期日通り返済したり、完済していれば問題ないですが、金融事故等のトラブルを起こした過去があるとその銀行から法人融資を受けられなくなります。
銀行は金融事故等のトラブルを起こした人が経営する法人に融資しても、法人からの返済は期待できないと考えます。
したがって、過去に事故を起こした過去がある銀行から法人融資は受けられません。
ちなみに、教育ローンの延滞について詳しく知りたい方は別記事の「教育ローンを借りて延滞すると法人の借入に影響する?」をどうぞ。
求償債務を負っている(信用保証協会に代位弁済している)
過去、銀行から保証付き融資を受けて完済できず、期限の利益を喪失し、代位弁済になると信用保証協会(以下、「保証協会」といいます。)に対して求償債務を負うことになります。
代位弁済の詳しい解説は別記事の「保証協会に代位弁済されるとどうなる?【徹底解説】」をどうぞ。
主債務者は法人ではありますが、法人の代表者は個人保証を入れることが一般的ですから、保証付き融資が代位弁済すれば代表者個人も求償債務を負うことになります。
銀行や政府系金融機関は求償債務を負っている人が代表を務めている企業に対し、融資を実行することはありません。
代表者個人が税金を滞納している
銀行融資の審査の際、法人の借入の連帯保証人となる代表者個人の納税証明書が必要になります。
納税証明書は税金を滞納していれば発行して貰えませんので、融資を受けることはできません。
法人の税金滞納は状況次第では可能性あり【例外】
代表者個人の税金はきちんと納付しているけど法人の税金を滞納している場合、滞納の度合いにもよりますが、融資を受けれる可能性はゼロではありません。
詳しくは別記事の「税金・社会保険料を滞納したら借入できない?【プロパー以外なら可能】」をどうぞ。
代表者個人所有の不動産が差し押さえを受けている
代表者個人が所有している不動産が債権者に差し押さえを受けていると、法人で融資を受けることはできません。
銀行は融資の申し込み先企業の審査を行う際、代表者個人や企業が所有する不動産の登記簿謄本を取得する場合があります(必ず謄本を取得する訳ではありません)。
この時、代表者個人が所有している不動産の差し押さえが発覚すると、「差し押さえを受けている代表者が経営する法人に対する融資はリスクが高い」と判断しますので、法人融資は断られます。
以上が代表者の個人信用情報がブラックで銀行融資を受けられないケースとなります。続いて最後に、ブラックで融資を受けようとしている方のよくある質問を解説します。
ブラックで銀行融資を受けようとしている方のよくある質問
ブラックで銀行融資を受けようとしている方のよくある質問とその回答は下記のとおりです。
- 実際に審査に通る可能性はどれぐらいですか?
- ブラックだと助成金や補助金は申請できない?
- ブラックで資金調達できる方法はありますか?
上記のとおり。
実際に審査に通る可能性はどれぐらいですか?
正直なところ、可能性は限りなく低いです。
なぜなら、銀行融資を受ける場合、保証協会の保証付き融資が基本となるからです。
業績・財務内容が良ければプロパー融資を受けれる可能性がありますが、そうでなければ保証協会の保証付き融資を提案されるため、申し込んだ時にブラックの事実がバレて審査落ちします。
プロパー融資は信用情報をチェックされることはほとんないので、プロパー融資を提案されれば融資を受けれる可能性があります
- 保証付き融資 → 基本的に初回申込時はチェックされる(2回目は見ないことが多い)
- プロパー融資 → ほとんどチェックされない
ただし、プロパー融資はよほど業績・財務内容が良くないと提案されないので、基本的には保証付き融資を提案される場合がほとんどです。
ブラックだと助成金や補助金は申請できない?
助成金や補助金は融資と違って返済不要です。信用情報は関係ないので申請できます。
助成金や補助金で重要なのは事業計画などの各種書類です。書類が整っていれば採択される可能性があります。
ブラックでも資金調達できる方法はありますか?
代表者の個人信用情報がブラックの場合、
- 日本政策金融公庫(現在の状況が良い場合)
- 不動産担保ローン
- ファクタリング(売掛債権の売買)
などであれば、資金調達の可能性はあります。
詳しくは別記事の「個人信用情報がブラックで銀行融資がNG!資金調達は諦めるしかない?【選択肢は3つある】」をどうぞ。
まとめ
以上、代表者の個人信用情報がブラックでも銀行融資を受けられるかどうかを解説しました。
法人と個人では審査の主体が異なるので、ブラックだからと言って、必ずしも銀行融資を断られるわけではありません。
ただし、「代表者の個人信用情報がブラックで銀行融資を受けられないケース4つ」という項目でも解説しているとおり、代表者個人の属性が悪いと銀行融資は受けれませんのでご注意ください。